学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2011年10月号)



『よーい どんけつ いっとうしょう』

梅田俊作・桂子 / 作・絵
岩崎書店 / 発行

1,150円(税込)

   今年の日本は大きな災害に見舞われています。台風も各地に被害をもたらしました。 天災は、人の手ではどうする事も出来ませんが、災害に立ち向かう準備と被害の爪痕を乗り越える知恵は人の手でしかできません。 こういう時にこそ、小さな力をたくさん集めて大きな力にしていかれるチャンスでもあります。 台風が過ぎ去ったあとの太陽は、より一層きらきらと輝きだします。 風も段々爽やかな秋の匂いがしてきました。 そうそう、運動会のシーズンです!どこかで、賑やかな歓声の声がきこえますよ。 誰の応援をしているのでしょうか・・・

いよいよ、ぼくたち いちねんせいの 50メートルきょうそうの ばんだ。
ドックン ドックン ドックン ドックン しんぞうが なりだした。
「よーい!」バーン!!
れつが ひとつずつ きえていって、
ぼくの じゅんばんが だんだん ちかづいてくる。
しんぞうが のどまで のぼってきそうだ。
「みずが のみたいな・・・・・」 「おしっこが でそう・・・・・」
うしろのほうで、「せんせー、トイレに いってきて いいですかー」と
だれかがいった。
となりの みえちゃんも とびだした。「ぼくも いってこよう!」
おうえんせきのうしろを はしっていくと、
てつぼうのしたで ちいさいこがないていた。
ぼくがたちどまると、そのこは まえよりも 
いっそう おおきなこえで なきだした。
ないているこの ひざこぞうには、ちがにじんでいる。
ぼくは はちまきをはずして ぐるぐると まいてやった。
「さあ、もう だいじょうぶだよ」
ぼくが たちあがると、そのこは また おおきく なきだした。
「ぼく いそいでるんだけどな・・・こまったなあ・・」
「なまえは なんていうの?」「えーん、えーん」
・・・なにをきいても ないてばかりいる。
そのとき、うしろで「あらあら、どうも ありがとう」と こえがした。
「ごめんね、あかちゃんの おむつを とりかえていたのよ」
それをきいて、ぼくもおもいだした。
「そうだ、ぼくも おしっこなんだ」トイレのまえは ぎょうれつだった。
(ぼくも はやく かれらなくちゃ おくれてしまう・・・・)
ぼくは まにあったのでしょうか・・・

   「がまんだ がまんだ うんちっち」の絵本を知っている人も多いでしょう。 梅田俊作・桂子夫妻の絵本はいつも子供たちのそばにいてくれるような気がします。 最初はほんの小さな不安や悲しみと感じていた事が、そのままにしているうちに、いつの間にか抱えきれないものになってしまう事があります。 それは子供も大人も同じです。梅田夫妻の作品には、不安や悲しみを乗り越える力がたくさん詰まっています。 相手の不安や悲しみに早く気付いてあげられる事、気づいたら共に考える事、共に気持ちを分かち合うことです。 たった一人でいい、自分ことをわかっていてくれている人がいることが大きな力になるのです。 絵本のぼくは、小さな子の不安と悲しみにいち早く気付きました。 そしてそばにいましたね。小さな子は安心できました、この安心はその子のお母さんの悲しみも取り除きました。 ぼくのちいさな行いは大きな喜びを生んでいます。ぼくは徒競争を走り終えてから、今度は自分が悲しみを抱えてしまう事になってしまいました。 でも、はなむら先生は、ぼくの悲しみに気づきました。そしてそばにいてくれました。 ぼくの悲しみは取り除かれ、先生から勇気までもらうことになっていきます。 あなたは"ぼく"になれるでしょうか、"はなむらせんせい"になれるでしょうか・・・



(赤鬼こと山ア祐美子)

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