学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2011年9月号)



『あいうえおの き』
ちからをあわせたもじたちのはなし

レオ・レオニ/作

谷川 俊太郎 / 訳

好学社 / 発行

1,529円(税込)

   厳しい暑さの終わりを告げる蝉のざわめきを追いかけるかのように、虫たちの声も聴こえてくるようになりました。記録的な暑さといわれ続けた夏でしたが、季節は巡ります。夏休みの間に、家族の人やお友達、それに普段は近くにいられない人たちとも、沢山話せたでしょうか。言葉を伝えるということは、勇気のいることです。それに、気持ちがいることでもあります。伝えるためには、適切な言葉を選ぶということもありますね。どうやったら、伝わる言葉をつくることが出来るかを虫たちが教えてくれるそうですよ・・・


『これが あいうえおの き だよ』と ありは いった。
『どうして あいうえおの きって いうの?』と ともだちの ありが たずねた。
『なんねんか まえ、このきは もじで いっぱいだった。
もじたちは こずえで はっぱから はっぱへ とびうつり ながら たのしく くらしていた。
もじたちは おきにいりの はっぱのうえ ひなたぼっこをしたり、そよかぜに ゆれたり してた。
あるひ あらしに なった。
もじたちは ちからの かぎり はっぱに しがみついたが―――
いくつかは ふきとばされた。すっかり おびえて しまった。
みんな おそろしさの あまり、したえだの しげみ ふかく かたまった。
そこへ へんてこなむしが もじたちをみつけた。
「ぼくは ことばむしさ、ことば をつくるのを おしえて あげるよ。
 かたまってないで いくつかずつ ならんでごらん。
 どんな かぜにも ふきとばされ ないよ」
しんぼうつよく むしは てを つないで ことばを つくる ことを おしえた。』
・・・そうして、さいごに もじたちが がんばって つくりあげた ことばは・・・・・


   レオレオニ&谷川俊太郎―黄金コンビの作品です。 以前「フレデリック」という作品を紹介しました。 絵本作家の中でも、1,2を争う人気のある方でしょう。 「フレデリック」が1967年、この作品は次の年1968年に発表されました。 レオニの初めての作品は絵本の原点ともいわれる「あおくんときいろちゃん」です。 孫たちとの買い物帰りの電車の中で、孫たちをおとなしくさせるために、たまたま持っていた雑誌の広告ページをちぎって創り上げたということです。 こんな日常に中で生まれた作品の中にも、彼の人生経験を物語るエピソードが込められています。 『私にとっては、己を知ることが、最も根本的な問題です。 このことは子供たちにも、無意識のうちに強く心に掛けていることなのです。 彼らだってその何者かになるのですから、それを見つけ出すことは、彼らにとって最大の仕事です。』 とレオニは語っています。この「あいうえおの き」を教訓的でなじめないという人もいるようですが、それは違うと思います。 文字の中に秘められた思い、文字の力を身近な虫や葉っぱという形で子どもたちにしっかりと伝えようとしています。 今こうしている中でも、命を落としている子供たちもいる、そういう事実を恐怖感ではなく、心にとめていくこと、共有していくこと。 そして、何が一番大切なことかをこの絵本は教えてくれます。 拙い子供の文字で書かれた言葉が世界を動かすこともあるのです。 さあ、私たちも子供たちとともに、まず、”あいうえお”から始めましょう。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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