学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2011年8月号)



『うみのしっぽ』

内田麟太郎 / 文

長 新太 / 絵

童心社 / 出版

1,365円(税込)

   今年の夏は予想をはるかに超えた暑さになりました。 埼玉県熊谷市、群馬県館林市、この二つの市は暑さの競争をしているのだそうです。 「日本中で一番暑いのはわが町だ!」盆地の暑さを誇る甲府市も名乗りを上げられそうですよね。 でも、暑さまでも利用して、町おこしを考えるのは素敵な事です。 それだけ自分たちの町を愛している事につながります。 生まれた場所ばかりが自分の町とは限りません。「住めば都」という言葉の様に、今いるこの場所が自分の町だということもあります。 移り住んだ町を愛するには美味しい食べ物に出会うのも一つです。 あなたの町の自慢は何でしょう、今度教えて下さいね。

「にげるんだ」「まってー」
なんと、ついてない ネコたちだったでしょう。
すてネコどうしがひっそりと、かたを よせあい くらしはじめた ばかりなのに。
「ここは、おれさまの なわばりだ」イヌが、きばを むいて おそいかかってきました。 きずだらけになって。よろよろになって。ふたりが やっと やすめたのは、
はじめて きた ふかい やまのおくでした。
「ここまでは、イヌも おってこないわよね」 「ああ、おってこないよ」
「わたくし、もう、おなかが ぺこぺこ」 「ぼくもさ」
ふたりは めのまえの かわを のぞきこみ、のどが ごくんと なりました。
サカナです。ふたりは ウグイに とびつきました。 いいえ、とびついて、ばちーん
どうじに、あごを はりたおされました。
「まちから きた すてネコなんかに くわせる かわザカナなんか、いないぜ。
もっと かわかみに いきな」と タヌキが・・
つぎには ぐあーん と クマに なぐられ、・・・・
ふたりは、かわかみに とぼとぼと あるいていきまいた。
ほそくなった かわの つめたいみずに きずだらけの ゆびを つけました。・・・
おとこのネコは、みずさんを くすぐりました。
そして・・・・、ネコは ふしぎなことが できる ネコになりました。
なにが ふしぎといって ネコが かわに てをいれると・・・。
ぴゅーん・・・とびでたものは?!

   ナンセンス絵本コンビのお二人の絵本です。 詩人であった内田麟太郎さんは長新太さんのお誘いで絵本を手掛けるようになったそうです。 言葉と絵がこれほどぴったりくる絵本は他にはないようにさえ思います。 2005年9月に亡くなられた長さんが惜しまれてなりません。 新しいお二人の作品に出会いたかったです。 「川は海のしっぽ」って思ったら海がより身近になってきます。 内田さんの発想に、やられた!って感じがしました。 あんなに広い深い海も、生き物たちのしっぽのようにゆらゆらしていて、この掌の中にあるような水の流れから繋がるのだと思うと優しい暖かい気もちになります。 くすぐられて我慢できなくなった海が魚を、ぴゅーん、ぴゅーんと運んできます。傷ついたネコの二人はどんなにか、お腹も心もいっぱいになったことでしょう。 海に囲まれた日本は、これからも海と上手につきあっていかねばなりません。3.11今も多く魂が眠る海、願わくば、赤子を宿す母の子宮の様な、優しい暖かい穏やかな海でいてほしい。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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