学校法人 聖愛幼稚園
〒400-0071
山梨県甲府市羽黒町618(地図
TEL 055-253-7788
mail@seiai.net



赤鬼からの手紙(2011年5月号)



『てんさらばさらてんさらばさら』

わたりむつこ / 作

まつしまえつこ / 絵

福音館書店 / 出版

800円(税込)

   桜も散ってすっかり春の装いも過ぎ去ろうとしていたのに、今年は花冷えの様な日々が続きました。 東日本大震災で被災された東北には桜吹雪の中に雪が舞う厳しい寒さもありました。 でも、季節はちゃんと巡ります。あたりの日差しは確実に輝きを増し、山々の緑も濃くなってきました。 分厚いコートもやっと脱ぐことができます。 青々とした大空には、方々で鯉のぼりが天高く悠々と泳いでいることでしょう。 それでも、ひょっとして季節外れの”ゆき”が舞うようなことがあったら、それは「てんさらばさら」かもしれません。 不思議な不思議な”ゆき”のお話です。

ひょ〜〜〜と、つめたいかぜが かいがんを ふきぬけていきます。
「おにさん、こちら」「まてまて・・・・・」「おばあちゃん、はやくはやく」
まゆが かけていきます。
「ねえ、こんどは なにか うたって!」
「じゃあ、こんなのはどうだい。
 ゆきふってこい てんさらばさら てんさらばさら かぜにまってこい  おしろいたべて ゆきよんでこい」
「あっ、ほんとに ゆきが ふってきた!」
「あれ、おばあちゃん、このゆき ふわふわして あったかいよ」
「なんと、これは てんさらばさらだよ」
「てんさらばさら?」
「これに おしろいを ふりかけると、すこしずつふえてね、そのたびに いいことが
 おこるんだよ。でも、いいかい、だれにも みせちゃだめだよ。せっかくのいいことが
 にげてしまうからね。」 おばあちゃんが いいました。
まゆは てんさらばさらを ちいさなうるしぬりの はこにいれ、おしろいを ふりかけました。 そして、こっそりと ひみつのばしょに しまいました。おしろいを ふりかけるたび、てんさらばさらは ふえました。 そして、ほんとうに つごつぎに いいことがおこりました。
まゆは18になりました。 すてきなだんなさまにあいあたいとねがったまゆは ひとりのわかものにであい  およめにいきました。これもてんさらばさらのおかげだと・・でもそれは、ほんとうでしょうか・・・

   学生の頃、「ケサランパサラン」というものが話題になった事がありました。 その本物らしきものを友人が学校に持ってきたのです。 小さな箱の中で「ケサランパサラン」はふわりふわりと踊っていました。 当時この絵本は誕生すらしていませんでしたので、この絵本に出会ったときは”あれだ・・”と、信じられないような気持ちになりました。 作者のわたりむつこさんは宮城県、絵を描かれたましませつこさんは山形県の方です。 東北に寄せる思いの中で生まれた作品です。 まゆの手から離れた「てんさらばさら」悲しみを抱えた人々のところまで、どこまでも飛んいけ!!〜てんさらばさらてんさらばさら かぜにまってこい、おしろいたべて みんなにゆき(幸)もってこい〜てんさらばさらは、ただのきっかけにすぎません。 幸せになる力はじぶんのなかにあるのですから。

(赤鬼こと山ア祐美子)


戻る



Copyright © 2010, SEIAI Yochien.
本ページと付随するページの内容の一部または全部について聖愛幼稚園の許諾を得ずに、
いかなる方法においても無断で複写、複製する事は禁じられています。
mail@seiai.net