学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2010年10月号)



『たろうのともだち』

村上 桂子 / 作
堀内 誠一 / 絵
福音館 / 発行

840円(税込)

   例年にない暑さも何とかおさまり、頬に当たる風も涼しく感じられるようになってきました。 耳をすますと虫の声も賑やかさを増しています。園での日々も半分が過ぎようとしていますね。 秋は、様々な行事が詰まっています。行事を一つ一つ積み重ねると、そのたびに友だちが増えるような気がします。 きっと、みんなで気持ちを合わせて、一緒に行事に向かって頑張るからでしょう。 あら、虫の声が聞えてきました、こおろぎが何かつぶやいています・・ひとりぼっちじゃつまらない・・・ですって。 何があったんでしょうか?

あるひ、こおろぎが にわを さんぽしていました。
おてんきは いいし、にわには はなが いっぱい さいて いるし、
さんぽは とても すてきでした。
でも、こおろぎは いいました。
「ひとりぼっちじゃ つまんないな」
こおろぎは ともだちが ほしくなって、こーろころと あるいて いきました。
すると・・・・かきねの そばで、ひよこが えさを ひろって いました。
こおろぎは あいさつ しました。
「ひよこさん、こんにちは」
けれど、あいにく、ひよこは ごきげんが わるくって、
つんつんと、あしで すなを けったきりでした。
「あの・・・・・・こんにちは」と、こおろぎは また いいました。
すると、ひよこは
「なんだ、ちびすけ、おまえなんか つかまえて、つっついちゃうぞ!」
「いやーん、ごめんよ。たすけてよ」
「それなら、ぼくの けらいに なるんだぞ」
「うん、いいよ。たすけてくれるなら・・・・」
そこで こおろぎは ひよこの けらいに なりました。
・・・こうして、ひよこはねこの、ねこはいぬの、つぎつぎにけらいになって、さいごにたろうに あいました。
たろうも、みんなを けらいにしたのでしょうか。

   1967年の作品です。今の子供たちや保護者の方々にとっては、" けらい"という言葉に違和感があるかもしれません。 けらいなんて、まるで、ももたろうの時代のお話の様?!いえいえ、毎日の子供たちの間で起こっている現実と少しも変わりはありません。 強い者にはへつらい、弱い者には威張ってしまう、大人の社会でも普通にあることのように思います。 わが子が入園して、保護者の方が一番心配するのが、友だちができるだろうか、ということではないでしょうか。 『けらいなんて、ぼく いやだ!』たろうが、きっぱりと言い放つと、他のみんなもやっと自分の本当の気持ちを言葉にすることができました。 皆が皆、たろうの様にはいかないかもしれません。でも、友だちの第一条件は、自分の気持ちをはっきりと伝え、相手の本当の気持ちに気づき、思いやることではないでしょうか。 どんなに喧嘩してもちゃんと仲直りできるのも、友だちになる秘訣かもしれませんね。友だちづくりのヒントは大人も子供も同じです。 たろうの言葉が私たちを勇気づけてくれます。                   

(赤鬼こと山ア祐美子)


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