学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2010年9月号)



『ろくべえまってろよ』

灰谷健次郎 / 作

長 新太 / 絵

文研出版 / 発行

1,365円(税込)

   今年の夏は、日本中のあちこちで記録的な暑さに見舞われました。気温が40度を超えたところもありました。人の体温よりもずっと高くなり、気づかないうちに熱中症で命をなくされた方も沢山いて心痛む夏でした。人間ばかりではありません。動物たちにとっても異常な夏だったに違いないですよね。毎日のように、そんな動物たちの痛ましい事件や、逆に大掛かりな救出劇が日本のみならず、世界中のテレビ等で放映されています。今回は、穴に落ちてしまった犬の、子供たちによる、ハラハラドキドキの救出大作戦のお話です。

きょゆーん わんわん  きょゆーん わんわん
  ろくべえが、あなに おちているのを、さいしょに みつけたのは、えいじくんです。
「まぬけ。」 と、かんちゃんが いいました。
いぬのくせに、あなに おちるなんて、じっさい、まぬけです。・・・・・
みつおくんが、うちから かいちゅうでんとうを もってきました。
てらすと、うえをむいて ないている ろくべえが、みえました。・・・・・
「ろくべえ。 がんばれ。」みんな くちにぐちに いいました。「ろくべえ。がんばれ。」
しかし、がんばれと さけぶだけでは、どうにもなりません。・・・
だれかが ロープをつけて、したにおりていけば いいのでしょうか。
それは いちねんせいに むりです。
きょうは、にちようびで ないので、おとうさんは いません。
こまった。 こまった。
・・・おかあさんを ひっぱってきました。
・・ わいわいがやがや、おかあさんたちは「むりよ。」とかえってしまいました。
「けち。」と、かんちゃんは、くちごたえを しました。・・
どうしよう。どうしよう。
そこへ、ゴルフの クラブを ふりながら、ひまそうな ひとが とおりかかりました。
「いぬで よかったなぁ。にんげんやったら、えらい こっちゃ。」
そのひとは、そう いっただけで、いってしまいました。もう、だれも あてには できません。
みんな くちを きゅっと むすんで、あたまが いたくなるほど、かんがえました。
「そや。」・・・・・さて、ろくべえは あなから たすかることができたでしょうか・・・

   灰谷健次郎・長 新太コンビの初絵本です。二人の作品の中には、いつも生命と向き合い、世の中の成り立ちは大きな強い力によるものはなく、実は小さな弱い力を寄せ合うことが一番大切だという思いが詰まっています。最近子供たちへの虐待のニュースが後を絶ちません。なぜ?と問いかけるばかりでは小さな命は救えません。ろくべえが助かった背景には、一年生の子供たちだけが、ろくべえの気持ちにたつことができたということでしょう。ろくべえの悲しさ、寂しさ、不安、その思いをわが身に置き換えて子供たちは、あるだけの知恵を絞ります、そして決断し、実行する!!大人は誰一人実行しないどころか、心も動いていません。子供は、困難を自分のもとして考え、乗り越えて、多くを学びます。                  

(赤鬼こと山ア祐美子)


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