学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2010年6月号)



『どうするどうするあなのなか』

きむらゆういち / 作

高畠 純 / 絵

福音館書店 / 発行

1,365円(税込)

   そろそろ、うっとうしい雨の季節がやってきます。雨模様になると、なんとなく気持ちが沈みがちになってしまいます。いやいや、うっとうしいなんて簡単に言葉にしてはいけませんね。多すぎる雨は、災害になってしまうこともありますが、庭の木々や、草花、農作物にとっては、大事な恵みの雨です。今回は、そんな恵みの雨に命を救われた、のねずみとやまねこのお話です。命拾いした5匹のおしゃべりは、まだまだ続いているようです・・

もりのなかから 3びきの のねずみが とびだしてきた。
「ひえ〜!」 「た、たすけてえ〜!!」 「にげろ〜!!!」
そのあとを 2ひきの はらぺこ やまねこが おいかけてくる。
「まて〜」 「くってやるぞ〜!」
みんな ひっしに はしっているから
このさきに ふかい あなが あることなんて まるで きがつかない。
「あわわ」 「きゃああああ〜」
いきおいあまって、のねずみも やまねこも あなのなかに
ひゅうううううん、どっし〜ん!!
「こ、こんなところに あなが あったなんて」
のねずみたちが あわてたけど もう おそい。
「こりゃ かんたんに でられそうに ないぞ」・・・・・
「うむむむむむ どうしたら いいんだ」やまねこは あたまを かかえた。
・・さてさて おなじあなに いっしょにおちてしまった、のねずみとやまねこのうんめいは・・・・?!

   木村裕一さんは、書店『赤鬼』時代にデザイナーの方からご紹介を受けました。当時は、造形作家として、TV幼児番組等で度々名前をお見かけしましたが、まだ絵本を手掛けてはいらっしゃいませんでした。1988年に満を持して、「あかちゃんのあそびえほんシリーズ」が出版されました。松谷さんの「いないいないばあ」が赤ちゃん絵本の主流であったのに対して、木村さんの赤ちゃん絵本は人気を二分するほどでした。そして、「あらしのよるに」で様々な絵本賞を受賞、絵本作家としても押しも押されぬ作家となられました。現在も数々の絵本を世に送り出しています。木村さんの作品の魅力は、規制に囚われない発想にあると思います。造形を駆使した仕掛けも楽しみの一つですが、お話の内容にも読者を引きつけてしまう仕掛けがあります。「あらし・・・」でも表現されていましたが、当然の様に反目し合わねばならない相手と改めて向き合うことで、新しい関係が生まれることの楽しさや愉快さ、加えて崇高な結びあいなどに気づかされます。この絵本では、ユーモアあふれるおかしさの中にふと、温かい互いの気持ちのやり取りがあってホッとします。高畠さんの描く飄々とした動物たちの表情が、よりいっそう木村ワールドに拍車をかけていますね。
                 

(赤鬼こと山ア祐美子)


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