学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2010年4月号)



『てがみをください』

やましたはるお / 作
むらかみつとむ / 絵
文研出版 / 発行

1,365円(税込)

   春一番が吹いたかと思うと、競うように、色とりどりの花々が一斉に咲き始めます。春は、とても待ち遠しいのに、あっという間に過ぎてしまうような気がします。いまそれぞれの別れや新しい出会いがいっぺんにやってくるのも、この季節です。そうそう、引っ越しをする人もいるかも知れませんね。引っ越しをすると、葉書や封書にして転居のお知らせをします。私も何度か出しました。新しい住所に便りが来るのを、今か今かと待っていたものです。今回は、引っ越しをした「かえる」のお話です。「かえる」が引っ越したのは・・・

ぼくの うちの いちじくの きには、あかい ゆうびんばこが かかっている。
ぼくと ぱぱが つくった、ぼくの ゆうびんばこだ。
まいにち、てがみが きているか どうか しらべるのが、ぼくの しごとなんだ。
このあいだ、ぼくが ゆうびんばこを あけに いったら、
はこの くちから いちじくの はっぱが のぞいていた。
あれっと おもって、なかを みると、みどりいろの かえるが 一ぴき、もぐりこんでいた。
「きょうは ひっこしで いそがしいんだ。かえった かえった。」
いばりくさって、ぼくに いった。
つぎのひ、ぼくが てがみを とりにいくと、あの かえるが めがねを かけて、
はがきを よんでいた。 「ずるいぞ、よその うちの てがみ、だまって よむなんて。」というと、
「ここは ぼくの うちだ。うちに きた てがみは ぼくの てがみだ。」
「だって、あてなが ちがうだろ。てがみは なまえをかいてある ひとの ものだよ。」
「じゃあ、どうすれば ぼくにも てがみが くるんだい。」かえるは ぼくにたずねた。
「そりゃ、じぶんからも てがみを かけばいいのさ。てがみを くださいって。」
ぼくは かえるに おしえてやった。・・さて、かえるに てがみは きたのでしょうか


   手紙を題材にした絵本も沢山ありますが、すぐに思いつくのが、この絵本です。すべてのページに表現される鮮やかな緑色、いちじくの葉、瓦屋根、犬小屋の屋根、芝生、傘等々そして、かえる。同じ緑色が、こんなにも違う表情の緑色になってしまう、村上勉さんの絵本手法の斬新さを感じます。山下明生さんは大好きな作家の一人です。木の枝にちょこんと座ったかえるの口から『てがみをください』の言葉が、こぼれおちそうに聞こえてきます。この絵本の初版は1976年、30年以上も前の作品ですが、パソコンや携帯電話の普及に伴い、子供たちの間でも、メールでのやり取りが当たり前の様になってきた現在において、大切なメッセージを伝えてくれます。手紙を書くときは、まず相手のことを想い図ることから始めます。ひとつひとつの言葉を時間をかけて選ぶことで、自分自身の文章が生まれてきます。手紙に記された字体も書いた時の気持ちを伝える大事な要素です。習いたてのひらがなで一生懸命に書いた子供たちからの手紙は、今でも母にとっては宝物です。
                 

(赤鬼こと山ア祐美子)


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