学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2010年2月号)



『まゆとおに』

富安 陽子 / 文

降矢 なな / 絵

福音館 / 発行

840円(税込)

   年に1度の大切な季節です。山から吹き下ろす北風がぴりりと頬をさし始めると、気がかりなのが、鬼たちのこと。今年もちゃんと、人間たちに会えただろうか、友だちになれた人間たちはいただろうかと思います。最近では、節分の行事も忘れ去られていくような気がしてなりません。鬼たちは、豆をまかれて追い払われても、本当はいつも人間たちに想いを寄せているのです。そして様々な災いから、人間たちを守っているようにも感じます。今月は、鬼とは知らずに、鬼と大の仲良しになってしまった女の子のお話です。

きたの おやまの てっぺんの さんぼんすぎのしたに、
ちいさな いえがありました。
そのいえには、のっぽの やまんばと 
やまんばの むすめ まゆが すんでいました。
あるひ まゆは、ぞうきばやしのおくで、とんでもなく おおきなひとに あいました。
「こんにちは」と、まゆが あいさつをすると、
そのひとは ぎらぎら ひかる めだまで じろりと まゆを みました。
「あなたの あたまの てっぺんに ついているのは、たんこぶなの?」と、
まゆが たずねると、そのひとは じひびきのような こえで
「つのに、きまっとるわい」
「シカでもないのに、つのを はやしてるなんて かわってるな」と、
まゆは おもいました。
まゆには そのひとが おにだと、わからなかったのです。
そのとき おには、とても おなかが すいていました。
・・おには、まゆが あんまり おいしそうなので おおなべで にて たべてやろうと、やさしいこえで いいました。
「じょうちゃん、ちっと うちへ あそびに こないかね」
「うん、いく!」まゆは、げんきに こたえました。
おには にやにや わらいながら ずしんずしんと あるきだします。
まゆは おにのあとを ぴょんぴょん とびはねて
ついていきました。
・・・たいへん、まゆは おにに たべられてしまうのでしょうか・・・

   2月、鬼の絵本をじっくり選ぶのは楽しみな時間です。新しい鬼の絵本に出会うと、また新たな自分と向き合うことができるような気がします。この「まゆとおに」では、まゆは鬼という形には全く囚われないで、鬼に出会います。やまんばかあさんからの教えが、鬼の心を溶かし、鬼を友だちにしてしまいます。本当なら、怖いはずの鬼も、やまんばかあさんの前では、はらぺこのお客様です。小さな女の子のまゆが、松の木をひょいと引っこ抜いたり、軽々と鬼を担ぎあげたり、その力強さに心が晴れ晴れします。そして、何といっても、やまんばかあさんが素敵です。やまんばが登場する絵本はたくさんありますが、こんな姿のやまんばには、出会ったことがありません。特製おにぎりのなんと、おいしそうなこと!きっと、料理も得意なのでしょう。何事にも動じない、どんなことも受け止める、料理上手な、やまんばかあさんみたいな母でいたいものです。
                 

(赤鬼こと山ア祐美子)


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