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赤鬼からの手紙(2010年1月号)



『じごくのそうべえ』
桂米朝・上方落語・地獄八景より

田島 征彦 / 作

童心社 / 発行

1,470円(税込)

   2010年の幕開けは、光がいっぱいの晴れ渡った青空でした。厳しい寒さでしたが、都会のビルの間からも、 富士山の姿をはっきりと眺めることができました。今年は、きっといい年になりそうな気がします。 1年中とはいかなくても、笑っていられる時間がたくさんあるといいですね。 笑いといえば、日本の代表的な笑いの世界には、「落語」があります。おじいさんおばあさんだけでなく、 最近は若者にも親しまれているようです。その「落語」を基にした絵本です。新年初笑いのはじまりはじまり、テンツクテン、テン、テン・・・

とざい とうざい。
かるわざしのそうべえ。いっせいいちだいの かるわざでござあい。
こちらの松のえだから、むこうに見えまする 酒ぐらのやねまで、
みごと わたりおおせますれば、ごかっさいを。
そうれ。 ぺペン ペンペン ペーン
おっとっとっとっと。あ――――――っ。
くう  ここ、どこやろか。死んでしもうたんや。
えらいことになってしもたわ。この道、どこへいくんやろか。
手には おがらのつえをもち   糸よりほそい声をあげ   おおおおい
・・・
わしら三人 うまいこというて、あの車にのせてもろたんは ええけど
あれが、ゆうめいな火の車やったんやな。じごくへの ちょうとっきゅうやったんやな。
ああ、こわあ。
わしは、歯ぬきしの しかいといいます。わたしは、いしゃの ちくあんともうす。
せっしゃは、やまぶしの ふっかいでござる。
・・・
さんずの川をわたり、とうとう、えんま大王のまえにつれてこられてしまいました。
あかおに、あおおに、きいろ、むらさき、みどりにピンクのおにまでが、まちうけています。
さてさて、4人のうんめいは・・・。

   上方落語の巨匠、桂米朝さんの代表作といわれるのが、「地獄八景亡者戯」です。その軽妙な語り口は、神業とも称されています。この落語を題材に、関西弁を駆使して描かれました。絵本の中でも大傑作の一つです。作者の田島征彦さんは、以前紹介した「とべ、バッタ」の作者の田島征三さんと双子のご兄弟です。二人の少年の頃の様子を描いた『絵の中のぼくの村』という映画を見た方もいるかもしれませんね。征彦さんは、型染めの手法で絵本製作をしています。その手法のおかげで地獄絵図が怖いものではなく、落語に見合った面白おかしく、しかも温かさの伝わる世界になっています。子供たちに日本の伝統芸能を伝えることは、大人の責任でもあります。それには、様々な入口が必要ですが、この一冊は、子供たちにとっても大好きな絵本になるに違いありません。読み聞かせは、お父さんの出番です。落語家や役者になったつもりで、「そうべえ」を楽しんで演じて下さい。
                 

(赤鬼こと山ア祐美子)


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