学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2009年10月号)



『まっくろネリノ』

ヘルガ・ガルラー / 作
やがわすみこ / 訳
偕 成 社 / 発行
1,050円(税込)
                

   今年の紅葉は早く始まっていると、今朝のニュースで話題になっていました。 山々は、もう、色とりどりにお化粧をしはじめたのでしょう。澄み切った秋晴れの空の青さが、 一層鮮やかな色を映し出します。最近は、夜にわざわざ出かけて行って、 真っ暗な中に月明かりで照らし出された紅葉を楽しむ事もあるようです。 そんな紅葉の美しさにも負けないくらいのきれいな鳥たちと、その中に1羽だけ、 まっくろな鳥のお話です。

ぼくの なまえは まっくろネリノ。
ぼくの かぞくは、とうさんと かあさん、それから にいさんが よにん。
ぼくは こんなに まっくろくろだろ、くらやみならば だれにも みえやしない。
とうさん かあさんは まいにち えささがし。だから とても いそがしいんだ。
いろんな いろした きれいな にいさんたちは、ちっとも ぼくと あそんでくれない。
あんまり まっくろだから だめなんだって。
ぼくは いつも ひとりぽっちで じっとしてるんだ。
よる みんなが ねむってからも ぼくは ひとり きの てっぺんで、 かなしいなあって かんがえてるんだ。
・・「どうすれば そんな いろに なれるの?」くすりを のめば、きれいに なれるかな? ところが たいへん にいいさんたちが きゅうに ゆくえふめいに なったんだ。
・・もりにも いないし、のはらにも いない。
いた いた。 きんの とりかごのなかに。
にいさんたち あんまり きれいなんで つかまえられちゃったんだ。かわいそうに。
きのどくな にいさんたち、どうしたら すくってあげられるだろう。
まてよ― ぼくなら だいじょうぶ・・・
さて、いったい ネリノはどうしようというのでしょうか・・・

   真っ黒の中にモザイクのような花が画面いっぱいに広がっています。いちど表紙を見たら、忘れられない印象的な絵本です。見落としてしまいそうな、ネリノもちゃんといます。

   1968年にかかれた絵本で、その年のオーストリアの子供の本の最優秀賞に選ばれました。 以来ずっと長い間、読み継がれています。お話は、ネリノ自身の言葉として語られていきます。 自分の身の上を、切々と話すネリノの目から、涙がこぼれているのではないかとさえ思ってしまいます。 でも、クレヨンの色彩が、そんなネリノをほっと包んでくれているようで、温かい気持ちになります。 子どもたちなら、暗闇のなかでもすぐにネリノを見つけて、ネリノと同じ目線で絵本の中に 飛び込んで行かれるはずです。ネリノの勇気ある行動は、にいさんたちへの「想い」です。 自分の力に気づき、自分を表現して兄さんたちを救いだし、想いが届きます。 今度は、兄さんたちがネリノに想いを返すのです。

   『お互いを認め合うこと』が、この絵本の大切なメッセージです。ネリノは、もうひとりぽっちなんかじゃありません。兄さんたちに囲まれて、真ん中でにこにこしています。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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