学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2009年7月号)



『すいかのたね』

さとう わきこ / 作・絵
福 音 館 / 発行
840円(税込)
                

   じりじりと日差しが照りつけると、どうしても食べたくなるのが「すいか」です。 もう、八百屋さんの店先やスーパーのおすすめコーナーにも並んでいます。 ピカピカに光った緑と黒の縞模様が目に飛び込んでくると、山や海やいろんな 風景が浮かんできて、すぐにでも夏の計画を立てたくなります。 あらら・・・とても甘くておいしい「すいか」だけれど、 種を取るのがめんどう・・なんて声が聞こえてきました。そんな事を言ったら 大変大変!なぜ?って、ねえ、ばばばあちゃん、そうよねえ、・・・

   ばばばあちゃんは にわに すいかのたねを まいたんだ。 「おいしい すいかが なるように」ってね。それを きのうえで みていた こねこがね、「ばばばあちゃん だいじそうに なにか じめんに かくしたな」って おもったんだ。こねこは、ばばばあちゃんが いなくなると、さっそく じめんを ほってみた。 「なあんだ、つまらない くろい たねだ」こねこは がっかりして、また もとのように うめておいたんだ。それを とおくで みていたのが こいぬだ。こいぬも じめんを ほじくってみた。「ちえっ、つまらん くろい たねだ」そのこいぬを きのかげから みたいた うさぎも じめんをほじくりかえして「なんちゅう つまらんもんを うめとくんだろ」そのうさぎを みていた きつねも じめんを ほじって「まったく くだらん くろい たねじゃないか」そのきつねを みていた ばばばあちゃんも、「なあんだ すいかの たねか。」すると いきなり くろい すいかの たねが どなったよ。 「いいかげんにしろ、つまらんとか なんとか やたら いいくさって!もう おいら めを だすのは やめだ やめだ!!」それを きいた ばばばあちゃんは おもわず どなりかえしてしまったよ、 さあて、たいへん、どうなってしまうんでしょう・・

   いやあ、愉快痛快、なんとも威勢のいいばばばちゃん!! ばばばちゃんシリーズの絵本は、他にもいろんなものがあります。どの絵本のばばばあちゃんも、私たちを元気にしてくれます。中でも「すいかのたね」は小さな黒い種の中に秘められた、無限の可能性や豊かさを感じます。動物たちから、ちっぽけな扱いを受けて、とうとう怒りだしていまう種。ばばばちゃんは、その種の背中をより力強く押します、背中を押された種はぐんぐんのびていく。強い口調の中に、ばばばあちゃんの暖かなまなざしが詰まっています。この絵本の中には、子育てのひとつの手法があるように思います。種が芽を出し、弦を伸ばし、実を結ぶためには、太陽の日差しや恵みの雨、時には肥料も必要でしょう、様々な外敵からも守らねばなりません。そうやって、見つめながら、やっと実がなったときの嬉しさはたとえようもないものでしょう。わが子の成長も見つめることから始まり、それは永遠に続きます。そうして、最後は、孫を見続ける事にもつながっていきます。願わくは、こんな威勢のいい、可愛い、ばばばちゃんになりたいものですね。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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