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赤鬼からの手紙(2008年6月号)



『わたしのいもうと』

松谷 みよ子 / 作
味戸 ケイコ / 絵
偕成社
1,260円(税込)

                

   朝から、雨模様。久しぶりの雨ですが、あたりの木々はとても喜んでいるような気がします。南のほうではもう、梅雨入りと聞きました。雨で外に出られない日は、どんな事をして過ごしましょう、いつもなら簡単に外に飛び出していかれるのに、ずっと家の中にいなくちゃならないなんて・・・この絵本の中の女の子は、雨のせいでもなく、ある時からずっと外に出られなくなってしまったのです。いったい女の子に何があったのでしょうか。

 この子は わたしの いもうと
 むこうを むいたまま ふりむいて くれないのです
 いもうとのはなし きいてください
 いまから 七年まえ
 わたしたちは この町に ひっこしてきました
 トラックに のせてもらって ふざけたり はしゃいだり
 アイスキャンディを なめたりしながら いもうとは 小学四年生でした
 けれど てんこうした学校で あの おそろしい いじめが はじまりました。
 ことばが おかしいと わらわれ とびばこが できないと いじめられ
 クラスの はじさらしと ののしられ くさい ぶたと いわれ
 − ちっとも きたない子じゃないのに・・・
 とうとう だれひとり 口をきいてくれなくなりました・・・
 やがて いもうとは 学校へ いかなくなりました・・・
 いもうとの からだに つねられた あざが たくさんあるのが わかったのです・・・
 かあさんが ひっしで かたくむすんだ くちびるに スープを ながしこみ
 だきしめて だきしめて いっしょに ねむり 子もりうたをうたって・・・・・・・・
 ある日 いもうとは ひっそりと しにました


   この絵本をこの場に紹介していいかどうか、とても悩みました。 でも私は、絵本の力を信じています。だから、お勧めしようと思いました。 作者の松谷さんが、「私のアンネ=フランク」を読まれた娘さんからの 手紙によって、生まれた絵本である事を記しています。 とても辛く悲しく重い真実ではありますが、松谷さんのまっすぐな言葉と 味戸さんの描く女の子の後ろ姿に、あたかも共にその場を共有しているか のような緊張感が静かに迫ってきます。こうしている今も同じ思いで 苦しんでいる人たちがいます。知っておかなければならないこと、 決して忘れてはいけないことがあることを子供たちに伝えなければなりません。 絵本の中にはそういう役目をもったものもたくさんあります。 この絵本は、〈絵本・平和のために〉のシリーズに入っています。 受け止め方は、年齢によっても、性格によっても様々です。 その子にあった適切な時期に、一緒に読んでいただけたらと思います。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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