桜が満開になり、チューリップ、すみれ、たんぽぽなど、色とりどりの花々が 辺り一面に咲き誇る季節です。入学、進学、新年度、新学期、新しく始まることが いっぱいです。ああしようかな、こうしようかな、それとも・・・何かが新しく 始まろうとする季節は、思いめぐらすことだけで、頭の中がパンクしてしまいそうに なりますね。これは、そんな気分が溢れてくる絵本です。さて、あなたは 何を選びますか・・・ねえ、どれがいい？

   もしもだよ、きみんちの　まわりが　かわるとしたら、
大水と、　大雪と、　ジャングルと、　ねえ、どれが　いい？
もしさ、ぞうに　おふろの　おゆを　のまれちゃう、たかに　ごはんを
たべられちゃう、かばに　ふとんを　とられちゃうとしたら、　ねえ、どれが　いい？
ねえ、どれが　いい？　　おしろで　食事、　気球で　朝ごはん、　川で　おやつ。
どれなら　食べられる？　くもの　シチュー、かたつむりの　おだんご、へびのジュース。
二千円で　トゲのある　いばらに　とびこむのと、一万円で　死んだ　かえるを　のみこむのと、 二万円で　おばけやしきに　とまるのと、　どれが　いい？
おとうさんが　学校で　おどっちゃうのと、おかあさんが　きっ茶店で　どなるのと、どっちが　いや？
どれにする？　　シンバルと、　たいこと、　トランペット。
どれを　手つだう？　ようせいの　まほう、小人の　たからさがし、まものの　いたずら、 ま女の　シチューづくり、サンタクロースのプレゼントくばり。　・・・それともさ、

   こんな質問攻めにあったら、大人なら、しまいに根負けしてしまうもしれません。 でも子供たちは、決してへこたれない。むしろ、もっともっと、次は次はと、 挑戦してくるに違いありません。親子１対１で向き合って読むのも、沢山の子供たちとの 読み聞かせのような手法でも、大いに楽しめる絵本です。少し年齢の上の子供たちは、 ひとりで自問自答しながら読んでも面白いです。ジョン・バーニンガムの絵が、 質問の意味合いをより際立たせて、言葉の奥にある世界を優しく温かく表現しています。 とてもありそうにない場面でも、どんどん引き込まれて、まるでその場にいるかのように ページの中に吸い込まれてしまいます。これがバーニンガムの魔法です。なかには、大水や大雪など、 多少気がかりと思われる人もいるかもしれませんが、子供たちは、大人の思う枠を飛び越えて、 柔らかく柔軟な心で受け止め、立ち向かう力を持っています。どんな場面の想定も、 子供たちの手にかかれば、豊かな世界に広がっていきます。この絵本は、ワクワク楽しんでいるうちに、 勇気や自分を乗り越えていく知恵をも、私たちに与えてくれます。そして、きっとどんな本嫌いの子も、 あっという間に釘づけにされて、目を輝かせることでしょう。