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赤鬼からの手紙(2008年3月号)



『フレデリック』
―ちょっと かわった
    のねずみの はなし―

レオ・レオニ / 作
谷川 俊太郎 / 訳
好学社
1,529円(税込)

                

   ふわっとした風が吹くと、分厚いコートを脱ぎ棄てて、 外に飛び出して行きたくなります。もう、あたりは暖かいおひさまの光がいっぱい。 冬の風が冷たければ冷たいほど、春は待ち遠しいものです。春ってどうして、 ワクワクした気持ちになるんでしょう、どうも目には見えない不思議な エネルギーの種がいっぺんに芽を出すように、冬の間に蒔かれているらしいのです。 実は、ちょっとかわったのねずみから、聞いた話なんですが・・・

   ふるい いしがきの なか、おしゃべり のねずみのいえ。 おひゃくしょうさんが ひっこして しまったので、なやはかたむき サイロはからっぽ。 ふゆはちかい。のねずみたちは、とうもろこしと きのみと こむぎと わらを あつめはじめた。みんな、ひるも よるも はたらいた。ただーフレデリックだけは べつ。 「フレデリック,どうして きみは はたらかないの?」みんなは きいた。 「こう みえたって,はたらいてるよ。」と フレデリック。 「さむくて くらい ふゆの ひの ために,ぼくは おひさまの ひかりを あつめてるんだ。」そして また フレデリックが すわりこんで,まきばを じっと みつめていた。「いろを あつめてるのさ。ふゆは はいいろだからね。」と フレデリック。また あるひ,フレデリックは ねむってるみたいに 「ぼくは ことばを あつめてるんだ。」 ふゆが きて,ゆきが ふりはじめた。のねずみたちは いしの あいだの かくれがにこもった。はじめの うちは,たべものも たくさん あった。みんな ぬくぬくと たのしかった。けれど たべものも なくなり いしがきの なかは こごえそう,おしゃべりを する きにも なれない。そのとき,みんなは おもいだした。「きみが あつめた ものは どうなったんだい,フレデリック。」・・・・さて、フレデリックは・・・ 

   レオ・レオニ作品の中でも、一番といってもいいくらいのお勧めの絵本です。シンプルな 表現の中にのねずみへの愛おしさや、自然への畏敬の思いまでが詰まっています。 そして、谷川俊太郎さんの流れるような言葉がよりいっそう、この絵本の世界を広げています。 このフレデリックへの理解は難しいのではないかと、解釈される方もいるかもしれません。 でもそれは、大人からの見方にすぎないと私は思います。なぜかというと、 フレデリックの持つ力は、子どものほうがずっとすぐれていると思うからです。 子どもたちは、毎日、知らず知らずのうちにフレデリックと同じ能力を発揮しながら 成長するのに忙しいのです。大人は、そんな子どもたちに気付かないことのほうが 多いのかもしれません。自分を貫くフレデリックと、そのまま受け止め、 理解するのねずみとのかかわり合いの中に、本当に大事なものは何だろうと、 考えていく糸口が見えてきます。きっと今、すぐそばにも、たくさんのフレデリックたちが、 受け止めてくれるのを待っている、そんな気きがします。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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