学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2009年2月号)



『泣いた赤おに』

浜田 廣介 / 作

梶山 俊夫 / 絵

偕成社 / 発行

2,100円(税込)

                

   1年でいちばん寒さの厳しい季節がやってきます。あたりの山々が雪化粧し始め、空気がしんしん冷え込んでくると、なんだか落ち着かない気分になってきます。やっぱり2月は、どうしても鬼たちのことを思わずにはいられません。今年も忘れないで、ちゃんと会いに来てくれるでしょうか・・・

どこの山か、わかりません。その山のがけのところに、家が一けんたっていました。 そこには、わかい赤おにが、たったひとりで、すまっていました。その赤おには、 ほかのおにとは、ちがう気もちをもっていました。
「わたしは、おにには生まれてきたが、おにどものためになるなら、できるだけ、 よいことばかりをしてみたい。いや、そのうえに、できることなら、人間たちのなかまになって、 なかよくくらしていきたいな。」
『ココロノ ヤサシイ オニノウチデス ドナタデモ オイデ クダサイ  オイシイ オカシガ ゴザイマス オチャモ ワカシテ ゴザイマス』
赤おには、こんな木のたてふだを立てました。ふたりのきこりがたてふだを読みました。 ところが、戸口からのぞくだけで、しりごみして山をくだってしましいました。 赤おには、どんなに毎日まっていても、だれもあそびにはきはしまい、いまいましいと、 たてふだをひきぬき、こわしてしまいました。そこへひょっこりと、青おにがやってきました。 赤おには、どうして、じぶんが、そんなにはらをたてているのか、話をしました。 青おには、
「そんなことなら、わけなく、らちがあくんだよ。・・・なにか、 ひとつの、めぼしいことをやりとげるには、きっとどこかで、いたい思いか、 そんをしなくちゃならないさ、だれかが、ぎせいに、身がわりになるのでなくちゃ、 できないさ。」
なんとなく、ものがなしげな目つきをみせて、青おには、でも、あっさりといいました。・・・さて、青おには、なにをしようというのでしょう・・

   30年前、児童書専門店【赤鬼】の店先には『ココロノヤサシイオニノウチデス・・』と 立て札が立ててありました。書店を開こうとした時、【赤鬼】にしようと心に決めていました。それは、 この赤さんのように、子供も大人も誰でも自由に来てほしいとの思いからでした。 絵本やこどもの本には、すべてのものを繋ぐ大きな力があります。どんな絵本の中にも、 相手を思いやる気持ちが溢れています。相手というのは人ばかりではなく、動植物や、 あらゆる世界のすべてをさします。私は、書店【赤鬼】がみんなを繋ぐ場所になって ほしいと思いました。短い期間でしたが、【赤鬼】を通して沢山のつながりができました。 私にとって「泣いた赤おに」は生涯に一冊の本です。浜田廣介さんの原文全文を載せた、 梶山俊夫さん挿絵の素晴らしい絵本です。当時はなかったこの絵本に、新たに 出会うことができました。赤さんと青さんに初めて出会った時のように、 今もワクワクしています。  
                 

(赤鬼こと山ア祐美子)


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