学校法人 聖愛幼稚園
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赤鬼からの手紙(2008年11月号)



『おおきな木』

シェル・シルヴァスタイン / 作・絵

ほんだ きんいちろう / 訳

篠崎書店 / 発行

1,162円(税込)

                

   ジリジリと太陽が照りつけていた日々が嘘のように、あたりが 静まりかえってきました。落ち葉の舞い散る音が聞こえてきそうです。 色鮮やかな日本の秋は、本当に美しいです。秋は実りの季節でも あります。葡萄、梨、柿、この頃は林檎も見かけるようになりました。 果物も色とりどりです。一面緑色の画面に、今にも落ちてきそうな りんごの真っ赤な色がすぐに目に飛び込んできます。小さな男の子が 手をいっぱいに伸ばして、りんごを受け止めようとしています。 こんな表紙の「おおきな木」のものがたりです。

むかし りんごのきが あって・・・かわいい ちびっこと なかよし。
まいにち ちびっこは やってきて  きのはを あつめ きのみきに よじのぼり
えだに ぶらさがり りんごを たべる。 
ちびっこは きが だいすき・・・ だから きも うれしかった。
けれども ときは ながれてゆく。 ちびっこは すこし おとなになり きは たいてい ひとりぼっち。
ところが あるひ そのこが ひょっこりきたので きは いった
「さあ ぼうや わたしのみきに おのぼりよ・・・」
すると そのこは
「ぼくは もう おおきいんだよ きのぼりなんて おかしくて。 
 かいものが してみたい。おかねが ほしいんだ。」
そのこは きに よじのぼり りんごを もぎり みんな もっていってしまった。
きは それで うれしかった。
ながいあいだ こなかった そのこが あるひ ひょっこり もどってきた。
「きのぼりしている ひまはない あたたかな いえが ほしい。」
おとなになった そのこは いった。おとこは えだを きりはらい
じぶんの いえを たてるため みんな もっていってしまった。
きは それで うれしかった。だが また おとこは ながいあいだ こなかった。
そして さいごに もとめたものは・・・

   この絵本が出版された時、世の中の反応は、衝撃と言っていいほどの反響であったのを、 覚えています。子どもの本というジャンルを一気に飛び越えて、大人たちの手にも どんどん渡り、大きな話題となりました。作者のシルヴァスタインは、アメリカでも よく知られたミュージシャンでもあります。およそ、このような物語をうみだすとは 思えない風貌の彼ですが、シンプルな線書きに込められた、"男の子"と "おおきな木"とのやりとりのこまやかさに、アーティストとしての彼の 醍醐味を感じます。そして、"おおきな木"が語りかける言葉には、 私たちを包む「神様の愛」を思わずにはいられません。読み終わって、涙を流す人にも たくさん出会いました。この絵本の中には、さまざまな思いを抱える人々の、生きていく 道筋のようなものが映し出されていくような気がします。ゆっくりと、言葉をかみしめながら、 親子で読んでほしいです。他にも、是非お勧めしたい彼の作品の中のひとつに 『ぼくを探しに』があります。いつか、ご紹介したいと思います。 
                 

(赤鬼こと山ア祐美子)


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