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赤鬼からの手紙(2008年9月号)



『しょうぼうていハーヴィ ニューヨークをまもる』

マイラ・カルマン / 作

矢 野 顕 子 / 訳

リトル・ドック・プレス / 発行

                

   9月という月には、どうしても、忘れることのできないことがあります。 2001年9月11日8時45分、アメリカのニューヨークでとても恐ろしくて 悲しい事件が起こりました。その日から、全世界はまた一つ、大きな 恐怖を抱えていくことになりました。このことを全く知らない皆さんにも、 この絵本なら解っていただけるのではないかと思います。 その時、大活躍した、消防艇ハーヴィのお話を聞いてください。

   1931年、ニューヨーク市、いろんなことがおきた。 ベイ・ブルースが611本目のホームランをヤンキースタジアムで打った。 ジョージワシントンブリッジがハドソン川にかかった。 ジャズの音楽から、「ハッチャッ!」という言葉がうまれた。 そして、よく晴れた日。ジョン・ジェイ・ハーヴィが登場した。 ハーヴィは他の12そうの消防艇のどれよりも、はやくて大きくて、 ぴかぴか。ハーヴィは川をのぼったりくだったりしながら、 さんばしでおきた火事を消していった。やがて、月日がたち、 ニューヨークの街も変わり、いつしかハーヴィの出番もなくなった、 オンボロ役立たずのハーヴィ・・ところが、そんな鉄くずのままで 川につながれていたハーヴィを、ニューヨークの人々は自分たちの お金を集め、もとどおりのぴかぴかハーヴィにしてしまった。 でももう消防の仕事は、ぜったいないよね、とみんなは言っていた。 そして、2001年9月11日、2機の飛行機がものすごい力で ツインタワービルに突っ込んだ。空は火と煙でおおわれ、 ビルは崩れていった。たくさんの人がけがをした、そして、 たくさんの人の命が失われた。その時、ハーヴィに緊急命令、 「ハーヴィ、きみが必要だ!」ハーヴィは、4日4晩、水を くみあげつづけた。こうしてニューヨークを守った、ハーヴィは 今では、みんなのヒーロー。「ハッチャッ!」

   この絵本を訳されたのが、矢野顕子さん、日本を代表するミュージーシャン。 あの日、矢野さんは自宅の窓から、その光景を目の当たりにしていたそうです。 訳された言葉にも、ひしひしと伝わります。作者のマイラさんの絵は、 街や人々が活気にあふれ、音楽が聴こえてきそうです。 そして、飛行機がビルに向かう場面は、静かに恐怖が迫ってきます。

   この絵本を描くにあたってのマイラさんの言葉を、お伝えします。 「・・ストーリーを淡々と語り、子供にも大人にも、この世界では、 恐ろしい出来事が確かに起こりうるのだということを伝えること。 ・・そこから人々は前に進んでいきます。なぜかはわからないけれど、 人は前に進みます。・・立派な人物になんてならなくていいのです。 できることはひとつだけです。どんな自分であっても、自分らしく 生きること、精一杯生きることなのです。」

   私はニューヨークに行ったことはありません。でも、いつか、ハーヴィに 会いに行きたいです。それと、ジャズを聴きながら「ハッチャッ!」と 叫んでみたいです。

(赤鬼こと山ア祐美子)


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