学校法人 聖愛幼稚園
〒400-0071
山梨県甲府市羽黒町618(地図
TEL 055-253-7788
mail@seiai.net



赤鬼からの手紙(2008年7月号)



『どうぶつえん物語』

あべ 弘士 / 作
絵本館 / 発行
1,260円(税込)

                

   7月の声を聞くと、おしりがむずむずしてきます。なぜって?・・・ それは、夏休みがすぐそこまで来ているからです。 あんなことをしよう、こんなこともできるかな、と考えるだけで わくわくします。地図を広げて旅行の準備を始めるのも今頃ですね。 旅行会社に聞くと、夏の国内旅行の一番人気は、北海道。それも、 旭山動物園を回るコースだそうです。その旭山動物園の飼育係を25年間も していた人が絵本を作りました。さて、どんな動物たちに会えるでしょう。 さあ、動物園の開園です。

雪がとけはじめの日、春をみつける
   ―ゾウの長い鼻とキリンの長い舌がのびています。
ポカポカ陽気の日、カワウソとひるね
   ―うとうとうと・・・とても持ちよさそう。
タンポポ いっぱいの日、クジャクとおはなし
   ―小さな女の子が1時間もはなしてたって
ノラネコがないた日、ライオンに予防接種。
   ―ライオンも「イタクナイ、イタクナイ」?!
オタマジャクシがおよいだ日、ダチョウの夫婦げんか つづく
   ―あら、まあ・・・
カミナリがとおくでなっている日、写生会
   ―こどもの絵には、どんな画家もかないません。

セミがうるさい日、台風の日、ひこうきぐもがうかんだ日、赤トンボ 空いっぱいの日。

空気ひんやりの日、ゴリラに哲学ならう
   ―ゴンタの背中が、ゆうやけに映えています。

ハクチョウがわたってきた日、ふりしきる雪の日、クリスマスの前のまえの日、お正月。

さむいさむい日、とおくの山からクマゲラがやってきた
―ヒュイーン、ヒュイーン・・・

こうして、毎日、休むことなく、どうぶつたちの事件はつづいていきます。

   この絵本ができた1994年、作者のあべ弘士さんは、まだ、飼育係を していました。25年間の日々の動物たちとの暮らしの中で、 生まれた絵本です。 今まで、見たことも触れたこともないような動物たちの姿が、 たくさん詰まっています。この1冊で、動物たちのことだけではなく、 飼育係の仕事や、それぞれの季節の美しさや厳しさ、人々のいとなみや 気持ち、そして、なにより、生命の大切さが伝わってきます。 この絵本の中に、生命の輝きが満ち溢れています。

   ○○の日という、詩のような書きだしに、次はどんな日、その次は、 どんな動物かしら、何が起こるんだろうと、どんどん引き込まれていきます。 絵も、柔らかな線画に色づけされたシンプルな画面が、 より動物たちの表情をいきいきとさせています。写実とは別の リアルさが迫ってきます。作者のあべさんの、温かいまなざしが全体を 包んでいます。 こんな飼育係に守られた動物たちが、動物園を訪れた人々をも、温かく 迎えてくれるのでしょう。それが人気を集める理由なのかもしれません。 私は、ぜひ夕焼けのきれいな時間に、ゴリラのゴンタに会いに行きたいです。

(赤鬼こと山ア祐美子)


戻る



Copyright © 2008, SEIAI Yochien.
本ページと付随するページの内容の一部または全部について聖愛幼稚園の許諾を得ずに、
いかなる方法においても無断で複写、複製する事は禁じられています。
mail@seiai.net