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書き下ろし連載126
道しるべ
ルカ福音書4章1−4節

細井保路

   イエスは霊によって荒れ野に導かれ、40日間悪魔から誘惑を受けられた。その間、何も食べず、その期間が終わると空腹を覚えられた。そこで悪魔はイエスに言った。「神の子なら、この石にパンになるように命じたらどうだ。」イエスは、「『人はパンだけで生きるものではない』と書いてある」とお答えになった。

   イエスさまは、神さまのことを伝える活動を始める前に、人里離れたところに退いて断食をしながら祈り続けました。この話はそのときのことです。神さまを確かな道しるべとして仰ぎながら生きていこうと思っても、その決心を揺るがすようなできごとや不安はたくさんあります。神さまから離れてしまおうとする思いを「悪魔の誘惑」と表現しているのです。

   ところが、実際は、わたしたちの心は、不安や焦りや闘争心や、さらには恨みのようなものまで抱えこんで、すがすがしさとはほど遠い状態になってしまっているのです。イエスさまは、出会う人々の心の中に、神さまを宿すことのできる静かな場所を探し求めていたのです。そして、見つけると喜んでその人たちを祝福したのです。そのイエスさまが、神殿にやって来ました。神殿は祈るための場所です。つまり、ここに来れば誰でも心の平和を取り戻せる場所であるはずなのです。しかし、その神殿さえも、商売の臭いしかしない場所になってしまっていました。そこでイエスさまは、乱暴な行動に出るのです。人の心にとって一番大切なもの、社会にとって一番大切なもの、それを象徴するはずの大切な場所が尊重されていないことに対して怒りを表されたのでした。

   「生きるために食べ物よりもだいじなものがあるか?」と悪魔が囁きます。それに対してイエスさまは旧約聖書の申命記8章の言葉を引用して答えます。この箇所には、「人はパンだけで生きるのではない」に続いて「神の口から出ることばによって生きる」と書かれています。

   「神の口から出ることば」とは何でしょう。神さまは私たちに何を語っておられるのでしょうか。神さまは何も語らず、何も答えてくださらないように思えます。でも聖書を読んでいくと根源的な「神のことば」が囁くように聞こえてきます。旧約聖書の出エジプト記3章にモーセが神さまの名前を尋ねる場面があります。そこで神さまは名前の代わりに、「私はここにいるよ」とおっしゃるのです。これこそ「神のことば」ではないでしょうか。

   大昔から、人がどこにいても、どんな状況であっても、いつも「私はここにいるよ」とおっしゃる方がいてくださるなら、私たちは、確かな道しるべを持つことになります。大昔の人が星を頼りに航海したように、私たちは「私はここにいるよ」という声を頼りに軌道修正すればよいのです。


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