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書き下ろし連載121
百倍のしあわせ
マルコ福音書10章28−31節

細井保路

   「ペトロがイエスに、『このとおり、わたしたちは何もかも捨ててあなたに従って参りました』と言いだした。イエスは言われた。『はっきり言っておく。わたしのためまた福音のために、家、兄弟、姉妹、母、父、子ども、畑を捨てた者はだれでも、今この世で、迫害も受けるが、家、兄弟、姉妹、母、子ども、畑も百倍受け、後の世では永遠の命を受ける。しかし、先にいる多くの者が後になり、後にいる多くの者が先になる。』」

   「福音のためにすべてを捨てたら百倍を受ける」つまり「捨てることこそが本当に豊かになること」というのは、禅問答のような話です。イエスさまが語る「福音」とは、神さまが全ての人の幸せを望んでおられるというメッセージのことです。人の幸せを願いつつ生き、何にもとらわれないでいれば、たとえ困難の中にあっても、いつも豊かに生きられるというのです。そんな修行僧のような生き方はしたくないと私たちは思います。でも、イエスさまは、努力して何かを捨てよとおっしゃっているのではないのです。そんな力の入った窮屈な生き方が幸せであるはずがありません。弟子のペトロは、「何もかも捨ててあなたに従いました」と誇らしげに言うのですが、一生懸命何かに打ち込むと、目標だけしか見えなくなります。また、たくさんのことを犠牲にして自分の力や時間を捧げると、報われなかったときの失望はとても大きくなります。

   努力の果てに何かを捨てるのではなくて、広い心で人の幸せを最優先し、自分の予定や利益をちょっと後回しにしてみるだけで、人は実におおらかに幸せな気分で生きられるのです。損をしたとか、悔しいとかいう気持ちは、計算ずくで生きているからこそ生まれてくる感情です。そういうマイナスの感情が湧いてきたときには、「後の者が先になる」事もあるという言葉を思い出せばいいのです。損をしていると感じるときでさえ、実は「百倍」の幸せがいつも私の手の内にあるのです。「百倍」という大げさな言葉にイエスさまのユーモアが感じられます。


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