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認定こども園 聖愛幼稚園

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書き下ろし連載120
大きな世界
マルコ福音書10章17−22節

細井保路

   「イエスはその人を見つめ、慈しんで言われた。『あなたに欠けているものが一つある。行って持っている物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に宝を積むことになる。それから、わたしに従いなさい。』その人はこの言葉に気を落とし、悲しみながら立ち去った。たくさんの財産を持っていたからである。」

   ある人がイエスさまのもとにやって来て、永遠の命を得るためにはどうしたらよいかと質問します。イエスさまは、人として守るべき掟を守ればそれでよいではないかと答えます。その人は、子どもの頃からそれは心掛けて来たと答えます。その答えに対してイエスさまは、それなら全部手放してごらんとおっしゃったのです。

   良い行いを一つずつ積み上げる、最良のものを地道に蓄える、「よい」と言われるものは何でも試す。そういう生き方は、自分を豊かにするように思えます。でもイエスさまは、自分のところに良いものを集めることに夢中になって、「神さまから頂いたものは神さまに返す」という精神を忘れてしまったなら、結局、心が神さまから離れて不幸になってしまうとおっしゃったのです。 自分で努力して、知識や財産や名誉を蓄えた人、あるいは運良くそういうものを豊かに与えられた人は、それらが自分を守っていると思い込み、すべての良いものを与えてくださる方が存在することを忘れてしまうのです。「天に宝を蓄えなさい」というイエスさまの言葉は、生活の本当の中心を、「私」ではなく、「天」に置く精神が大切だと教えているのです。

   よいものを自分のところにかき集めようとする、またそれが出来る立場にいる彼に対して、イエスさまは、引き算の精神を教えたのです。「施せ」と言われますが、十分な財産を持っている彼に何かを手放す具体的な体験をさせることが目的だったのです。私を中心とした円に囲まれて守られるのでなく、「天」を中心にしたもっと大きな円に守られて暮らしてこそ幸せになるのだとおっしゃっているのです。


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