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認定こども園 聖愛幼稚園

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書き下ろし連載106
何かが変わる
マルコ福音書2章22節

細井保路

   「だれも、新しいぶどう酒を古い革袋に入れたりはしない。そんなことをすれば、ぶどう酒は革袋を破り、ぶどう酒も革袋もだめになる。新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れるものだ。」

   私たちの内には、新しいものに惹かれると気持ちと、慣れ親しんだものに対する愛着との両方が存在しています。学ぶということは、新しいものと出会うことでもあり、古い、蓄積され築き上げられたものを吸収することでもあります。一人の子どもが、何かを学ぶこと、あるいは社会に適応していくことは、その子にとっては、新しい体験でありながら、実はすでにあるものの中に取り込まれていくことでもあるのです。しかし、そこで見落としてはいけない大切なことがあります。すでにある社会や、すでにある学問体系などは、決して完全なものではなく、むしろ、新しいものに出会うことによって、すでにあるもののほうも変化していかなければならないのです。大げさな言い方をすれば、ひとりの赤ちゃんをこの世に迎え入れた瞬間に、世界は何か少し新しく変わるのです。

   新しい仲間、新しい文化、新しい事態に出会うたびに、お互いが少しずつ変えられていくのです。そのバランスがとても大切です。すでにある考え方やしきたりを強要すれば、個人は自由を奪われ苦しむことになります。反対に、個人が自分の興味や自分のルールだけを主張するならば、社会は混乱してしまいます。そして、往々にして、社会を安定させようとする力が大きくなると、その社会に新しい息吹を吹き込む役割を持っているものを認めようとしなくなってしまうのです。変化を受け入れないことは社会にとっての損失なのに、そのことに気づかなくなってしまいます。

   築き上げてきたもの、守り抜いてきたものを、次世代に伝えようとするとき、こちら側も何か少し変化を受けるのだということを意識してみましょう。それは、私自身を、ひいてはこの社会を豊かにするものなのです。


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