「『はい』は『はい』、『いいえ』は『いいえ』とだけ言いなさい。それ以上のことは悪魔から来る。」とイエスさまはおっしゃいます。これは、「嘘をつくな」という教えです。
私たちは、嘘をつきます。「絶対」とか「必ず」とかいう言葉で約束を強調することもします。それは、相手に信じてもらいたいから、相手に受け入れられたいから、思わず口にするのです。間違いを犯したときに、「二度としないと誓うか?」と言われれば、「誓います」と言うしかありません。そうしなければゆるされないからです。でも、だれも「もう絶対にミスは犯さない」とは言い切れないはずです。どこかで嘘が強要されているのです。ウソツキが生まれる根っこには、信じてもらえない淋しさや、受け入れられない悲しみがあるのです。
ウソツキを生み出す社会は、もう一方で、嘘を絶対許さないタイプの人をも生み出します。ものごとを、「嘘か本当か」「正しいか間違っているか」だけで峻別しようとする人です。嘘や言い訳や理不尽な押し付けに耐えてきた人たちは、「それは違う!」と自分をガードしながら生きなければなりません。その結果、いつも「正さ」を問題にすることになります。そして人間関係はトゲトゲしいものになってしまうのです。
嘘をつき、言い訳をしながらすり抜けていくような人生はとても空しいものです。自分が正しい人間であると自他ともに認めさせるために、心を閉ざし相手を攻撃するばかりの人生も淋しいものです。
人生を豊かに生きるためには、嘘をつかなくてもいい環境を、お互いに作り上げていく以外にないのです。
こう考えてくると、家庭という小さな社会が、いかに重要であるかということがわかります。わが子の人生を本当に明るく幸福なものにしたいと望むのならば、わが子を無条件で受け入れ、信用し、親自身が自己正当化ばかりせずにおおらかに生きることが大切です。
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