学校法人 聖愛幼稚園
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書き下ろし連載61
相手を生かす
マルコ福音書9章33〜37節

細井保路

   弟子たちが、誰がいちばん偉いかと議論していた、と聖書に書かれています。なんとも情けない話だと思ってしまいますが、よく考えてみると、私たちも、弟子たちのことを笑えないことに気づきます。人が複数いれば、必ず力関係が生まれます。誰もが、自分が一番でありたいからです。自分のほうが少しでも上だと思いたいのです。年齢や能力や立場や、何でもいいから、少しでも自分の方が上だと言えることがあれば、相手の権力の下に屈服しないですむからです。そうやって誰かが上に立てば、その時、人間関係は力関係に変わってしまいます。誰かの存在価値は高められるけれど、誰かの存在価値は貶められてしまうのです。

   イエスさまが目指したのは、どんなときにも、相手の存在価値が高められることでした。そのために、「いちばん先になりたい者は、すべての人の後になり、すべての人に仕える者になりなさい。」と教えられたのです。

   謙虚な態度をとれば、相手に押しつぶされてしまうという不安があるので、私たちはなかなか弱い立場を選ぶことができません。誰かが上に立てば、必ず力関係が生じるけれど、誰かが相手を生かすために下に立つならば、実は、すべての存在の価値が底上げされることになるのです。

   そのことに気づかせるために、イエスさまは、ひとりの子どもを抱きあげて、「この子どもを受け入れる者は、神を受け入れることになるのだ。」と言われました。多くの人は、実際に謙虚に生きています。権力を握ろうとは思っていないし、一番でなくてもよいのです。でも、目の前に子どもがいたら、自分より小さな弱い存在だと思ってしまいます。イエスさまは、その小さな存在を、慈しみの眼差しで見るだけではなく、その存在の価値がもっと高められるように関わらなくてはいけないとおっしゃっているのです。

   出会う相手が生き生きと生きられるようにという願いを、いつも心の中に持っていましょう。


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