学校法人 聖愛幼稚園
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書き下ろし連載60
かかわる力
マルコ福音書7章31〜37節

細井保路
                

   イエスさまが耳のきこえない人を癒す奇跡の話が書かれています。耳が聞こえず、話すこともできない人に向って、イエスさまは、まずその両耳に指を差し入れ、さらに唾をつけてその舌に触れ、「開け」と言われました。なんとも奇妙な行動のようにも思えますが、全く耳が聞こえないまま長い時間が経過している状態を想像してみてください。イエスさまの指によって、その人は、忘れかけていた自分の耳の存在に気づいたはずです。

   身体的な障害が、ときに人とのかかわりを困難にします。人との間に大きな距離ができてしまうからです。人に裏切られたり、だまされたり、攻撃されたりすることも、人とのかかわりを困難にする原因になります。私たちは皆、多かれ少なかれ、人とのかかわり方について困難さを感じて生活しているのではないでしょうか。

   「人々は耳が聞こえず舌の回らない人を連れて来て、そのひとの上に手を置いてくださるように願った。」というのですから、この人には、心配して世話してくれる仲間がたくさんいたことになります。耳が聞こえず、うまくコミュニケーションがとれないにも関わらず、人とのかかわりは失われずにあったということです。もし、かかわってくれる人がいなかったら、その孤独感はもっと深いものだったでしょう。

   イエスさまは、深い孤独感の中に閉じ込められている人たちの身心を回復させたのですが、そのことは、かかわることをやめなかった周囲の人たちにも大きな喜びをもたらしたことでしょう。

   非力な私たちは、イエスさまのように、孤独な人の心の中にまで切り込んでいくことはできません。でも、かかわり続けることはできます。関わり続けながら、上手なかかわり方を模索していけばよいのです。私の側の押しつけがましさが、相手との距離を生んでしまっていることだってあるのです。相手のかかわる力を引き出すことができないなら、それは、私の側のかかわり方にも問題があると思ってみるべきです。


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