学校法人 聖愛幼稚園
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書き下ろし連載59
心の重心
マルコ福音書7章1〜13節

細井保路

   イエスさまの時代の信心深い人たちは、食事の前に手を清めることさえも、宗教的な儀礼として高め、それを守らない人たちを軽蔑しました。イエスさまは、宗教的な儀礼を最優先する生き方に疑問を投げかけます。そして、「あなたたちは神の掟を捨てて、人間の言い伝えを固く守っている。」と指摘するのです。

   本当の宗教心は、自分の心のうちで神さまが働いてくださることを信じることです。だから、何かにすがる必要もないし、周囲からの評価をも必要としないのです。重心がしっかりと両足の間にあれば、私たちは、倒れることなく立っていることができます。しかし、重心が外へはずれてしまえば、どんなに頑張っても倒れてしまうのです。何かにすがらなければならないということは、心の重心が外へはずれてしまっている証拠だといえるでしょう。神さまが命を与え支えてくださっていて、その頂いた力によって私たちは生きているのだと思えれば、何かにすがったり、何かに寄りかかったり、人の評価を拠り所にしたりしなくてよいのです。

   私は、多くのことを知っており、多くのことが出来、正しく生きることができるから、何にも頼りません、という人がいるかも知れません。しかし、よく考えてみてください。自分の知識や能力や正さを主張する人は、無意識のうちに、それを人に認めさせようとしているのです。つまり、自分の足でしっかり立っているつもりでも、実は人の評価に寄りかかっているのです。

   イエスさまは、さらに、「あなたたちは、受け継いだ言い伝えで神の言葉を無にしている。また、これと同じようなことをたくさん行っている。」と言って彼らを叱りました。受け継いできた習慣を守ることは、決して悪いことではないし、それによって共同社会は成り立っているのですが、一人ひとりの内にある命の輝きよりも「言い伝え」のほうが優先してしまったなら、人は本当に生き生きと生きることができなくなってしまうのです。


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