学校法人 聖愛幼稚園
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書き下ろし連載56
何のためのルールか
マルコ福音書7章14〜23節

細井保路

   「外から人の体に入るものは、人を汚すことができない。それは人の心の中に入るのではなく、腹の中に入り、外に出される。・・・人から出て来るものこそ、人を汚す。」とイエスさまは言われます。

   大気汚染や水質汚染が大問題になっている現代に、もしイエスさまがいらっしゃったら、それでも「外から人の体に入るもので人を汚すことができるものは何もない」とおっしゃるでしょうか。多少トーンが変わってくるかもしれません。しかし、大昔から、化学物質ではないにしても、体に有害なものはあったはずです。イエスさまがおっしゃりたかったのは、悪いことの原因をいつも外にばかり探して、自分をかえりみない姿勢を改めなさいということなのです。

   有害なものを退け、良質な環境を整えることができたとしても、人の心の優しさや温かさを失ってしまったら、それはとても悲しいことです。そして、宗教は本来、人間らしい心をとりもどすためのものであるはずなのに、宗教規定を守ることでことたりると思っていると、かえって、排他的になり、自己中心的になり、傲慢になる危険があるのです。

   イエスさまの時代には、食べてはいけないものや、食べ方の規定などが色々あったようです。おそらくは衛生面の配慮から作りあげられていったルールでしょう。だからそれを守ることは、危険に近づかないという意味では確かに大切なことだったのです。しかし、それだけを守っていても、お互いが支え合って生きていくための原動力にはなりえません。ルールを守っていれば安心という生き方は、いつしか、それを守れない人を軽蔑したり、弾劾したり、切り捨てたりすることにつながります。そして、助け合って生きるというもっと根本的なルールを忘れてしまうのです。

   幼児期は、人間としてのルールを覚えていく大切な時期です。ルールはすべて、人を大切にするためのルールであることを、子どもたちに上手に伝えていきたいものです。


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