学校法人 聖愛幼稚園
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書き下ろし連載19
人はパンだけで生きるのではない
マタイ福音書4章4節

細井保路
                

   荒井良二さんが絵を描いている「森の絵本」(2001年講談社刊)という詩の本があります。 詩の作者は長田弘さん、私の大好きな詩人です。「きみにとって大切なものは何?」と 問いかける詩です。 その詩の中に、「おおきな木は じぶんよりおおきな影を つくります。」という フレーズがでてきます。これはとても深い言葉です。大きな木はそれを見上げるだけでも 心が落ち着くものですが、その木の下には、陽の光に照らされて、実際の木よりももっと 大きく伸びた影をつくるのです。1本の木の存在は、陽の光や、周囲の空間や、地球の歴史まで も背負って立っているのです。そして、木の周辺のそれらすべてのものも含めて、 その木の存在があるのです。

   そのことは、私の心を広く大きくしてくれます。私は、誤解されたり 悩んだりして自分の狭い心の中に閉じこもっている必要はなくて、 周囲に美しい花が咲き乱れていれば、それも私を作り上げている一部であり、 遠くに神々しい山があれば、それも私を作り上げている一部なのです。 もちろん私のそばに、あるいは遠くにでも、優しい味方がいるなら、 その人たちの優しさも私の一部なのです。

   イエスさまが、古い言葉から引用した有名な句があります。

「人はパンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる」
 有名な言葉なので、どこかで聞いたことがあると思います。日々のパンを得るために、人はあくせく働いています。とりあえずの欲求を満たすことで、精一杯になってしまいがちです。だからこそ、私を包んでいる大きなもの、人も環境も歴史もひっくるめて私なのだという感覚を、ときどき思い出しましょう。


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