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赤鬼からの手紙(2008年2月号)



『たいこのすきな赤鬼』

松谷みよ子  / 文

石倉 欣二  / 絵

星雲社   / 発行

1,365円(税込)

                

   鬼の絵本をさがすとなると、なんとなく体中の血がドクドクしてくるような 気がしてしまいます。クリスマスのピカピカや、お正月のわくわく。 季節の中で、心がさわぐ時がありますが、私にとっては、 2月のこの季節がいちばんドキドキしてしまいます。 やっぱり、山から鬼がおりてくる・・・そう信じているのです。 さて、どんな鬼がおりてきますやら・・・・

   たいこのすきな赤鬼がいました。鬼とたいこはとっても、にあっています。 ふといゆびでバチをもち、ふというでをふりあげて、ふとい足でふんばって、 赤鬼はたいこをたたきます。赤鬼はじぶんのたたくたいこの音が、 じまんでしかたがありません。あさからばんまで、ドンドガドン、 ドンドガドン・・・ところが、どんなにいばってたたいても、 だれもきいてはくれません。「うまい!」とほめてももらえません。 赤鬼はつまらなくなってきました。そこで、山のけものたちにむかって、 おおきなこえでさけびました。
「あつまれー!たいこをきかせてやるぞー!」
ずいぶんらんぼうな、さそいかたですけど・・・けものたちは、 それぞれにでかけていきました。
「鬼だろ、こわいぞう。くわれてしまうかもしれないよ、 だいじょうぶだよ、みんなでいけばこわくないよ、、、」
うさぎ、くま、きつね、しか、りす、もぐらまで・・・みんな あつまってきました。赤鬼は、うれしくて、うれしくて、むちゅうで たいこをたたきました。ダンダカダン、デデンデン、ドンドガドン・・・ いや その音のものすごいこと、おそろしいこと。ところが、 どうしたことでしょう、けものたちは、あまりの音のすごさに、 にげだしてしまったのです。赤鬼がきづいたときには、 もうだあれもいません。赤鬼はきゅうに、くやしくなっておおあばれ・・・ でも、それもかなしくなって、とうとうなきだしてしまいました。 そんな赤鬼のまえに、白いひげをはやしたおじいさんがあらわれました。 山の神様でした。山の神様のいうことには、すきなたいこを、 すきなだけ、たたけるところがあると・・・・

   ゴロゴロと鳴り出すと、つい空を見上げて探してしまいたくなります。雷さまのお話もたくさんありますが、このお話が絵本になったのは、最近であることを、絵本のあとがきから知りました。私は、赤鬼のたいこの音が、けものたちにも喜んでもらいたかったなあ、と可哀そうに思います。たいこは、人類最初の楽器とも、心臓の音とも、いわれることがありますね。赤鬼のたいこの音が、おそろしいと聞こえてしまったのは、赤鬼のことをおそろしいと、おもいこんでいただけなのかもしれません。空の上の、赤鬼のたいこは、きっと、楽しい音やうれしい音、悲しい音やさみしい音にも聞こえているでしょう。赤鬼の心の中は、そんなたくさんの気持ちで溢れていたのですから・・・さあて、耳をすませてみましょう、赤鬼のたいこの音が聞こえてくるかもしれません。
                 

(赤鬼こと山ア祐美子)

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