本屋さんで、この絵本にであって、そのまま見すごしてしまう、
なんて人はきっと、だれひとりいないでしょう。この題名と表紙のカバの
とぼけた顔に、どんな人も動けなくなってしまうはずです。
さて、カバくんのふしぎなちょうしの声がきこえてきました。
まんまるの目をしたカバくんがホースをにぎって、いきおいよく
はしごをのぼろうとしています。カバくんのしょうぼうし!
しょうぼうふくもきまっています。なかなかかっこいいぞ!とおもったら・・・
あらら・・・ はしごがぜんぶおれちゃった。
つぎはふなのりなれるかな・・・ふねがまっぷたつになっちゃった。
パイロットならどうかな・・・ロケットもポッキリ。
まあ! バレリーナ?! カバくんておとこの子だったよね
ピンクのチュチュにつけまつげ・・・・でもぶたいにあながあいちゃった。
それからピアニストにカウボーイ、サーカスのつなわたり・・・・
つぎからつぎにカバくんはちょうせんしていきます。
じぶんにいちばんにあうものはなんだろう・・・
あれもダメ?! これもダメ?! なかなかおもうようにはいきません。
なんども なんども しっぱいしてしまいます。でもカバくんはあきらめません。
カバくんのかおはちっともへこたれていません。
へこたれないカバくんの目は、あいかわらずまんまるでやさしいのです。
ぜんぶしっぱいしちゃったカバくん、さて、どうしたのかな・・・・。
訳をした今江さんにお会いしたとき、「この絵本の訳をどうしようかと
悩んでカバくんとにらめっこしていたら、だんだんカバくんが大阪弁で
話しかけてきたんですよ」って笑って話されていました。
見れば見るほど本当にそんなカバくんの声が聞こえてきそうですよね。
この絵本に出会ってから― ぼち ぼち いこか ―のセリフは口ぐせの
ようになりました。
わたしは今でも、この絵本をすぐそばにおいて、― ぼち ぼち いこか ―と
声をだしながら、カバくんに助けてもらっています。このごろは
10cm×13.5cmのミニ本が出版されていますので、カバンの中に
しのばせて、くじけそうになったり、疲れちゃったりしたらカバンの
上をポンポンとたたきながら、
― ぼち ぼち いこか ―ってね。
(赤鬼こと山ア祐美子)
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