五味太郎さんの絵本は、どんな絵本も、ひと目でわかります。
まず、その表紙の色使いの美しさが目に飛び込んできます。この絵本は、
白地がその色の美しさを際立たせています。おとなの目には、部屋の飾りにしたくなる
くらいの完成されたイラストとして映ってきます。
そして、もうひとつ、五味さんの絵本で大切なことは、たくさんのしかけがあることです。
絵本の楽しさ、おもしろさがいっぱいつまっていて、可能性が果てしなく広がっていきます。
― さあて、にげだした きんぎょをおいかけるぞ!! ―
きんぎょばちから、きんぎょがにげだしちゃうってところがともかく、
びっくりしてしまうのです。でも、それがなんだかとても痛快な気分に
なってしまいます。
本当なら、小さなきんぎょばちの中の世界だけで、ガラス越しに外の世界を
見つめているきんぎょ・・・。
そのきんぎょが外にとびだしたら、どんなだろう・・・。何をしたくなるのかな・・・。
きんぎょは、思いもよらぬところに、顔をだしたり、かくれたり、こっちを見たり、
おいかけているこちらも気が気ではありません。子どもといっしょにページをめくると、
必ず「ここ」「あれ」「そっち」「あっち」と指で指しながら、だんだん指の力も強くなって、
見つけた時の声もどんどん大きくなってきます。
何度でも何度でも同じことをくり返すことの楽しさが絵本の大きな魅力です。
子どもは決してあきることはありません。やっと最後のところに近づいても、
また最初から『読んで!!』とせがまれます。なかなか最後のページにたどりつけません。
しまいには、おとなの方が根負けしてしまうこともしばしばです。それでも、くり返すうちに、
やっと気持ちが落ち着いて最後の一枚をめくります。
― もう、にげないよ ―
ほっ。きんぎょが、いちばん行きたかったのは、どこだったんでしょうね。
夏まつりで金魚すくいをやったら、そのきんぎょが教えてくれるかもしれませんね。
(赤鬼こと山ア祐美子)
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