おじさんは、出かける時はいつも必ず、手に持って出かけます。
何をって?もちろん、「かさ」です。それも、きっちり、きれいに折りたたんで、
とても大事そうに・・・。
このおじさんは、もしかしたら英国に住んでいたかもしれません。
だって、英国紳士は、必ずステッキを持っているといいますから。
おじさんのかさは雨具ではなくて、おじさんの体の一部のようです。
だから、自慢げに さっそうと歩きます。
ちょっぴりの雨なんてへっちゃらです。でも、
どしゃぶりの雨の日は絶対でかけません。
ところが、ある雨の日、ぬれないように大事にかさをかかえたおじさんの耳に
ふしぎな音がきこえてきたのです。
"あめがふったら ポンポロロン・・・
あめがふったら ピッチャンチャン・・・"
かさをさした女の子が楽しそうに唄っています。
おじさんの胸はドキドキしてきました。
"ほんとかな・・・"
おじさんの胸のドキドキはおさまりそうにありません。
パッ!
おじさんは、とうとうかさをひらいてしまいました。
おじさんの口もとから、"ポンポロロン・・・ ピッチャンチャン・・・"
おじさんは雨なのに、晴れ晴れした気持ちで家に帰りました。
もちろん、おくさんは、はじめてぬれたおじさんのかさを見てびっくりしましたけれど・・・
おじさんには ぬれたかさはピカピカに輝いて見えたでしょうね。
雨の日はゆうつになる時もあるけれど、新しいかさや新しい長ぐつを買ってもらった日の雨の待ち遠しいことといったらありません。
この絵本を開くと、毎回、ちがった雨の音に出会うことができます。
(赤鬼こと山ア祐美子)
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