イエスさまには親しい友達がいました。その代表的な人として、
聖書には、マルタさんとマリアさんという姉妹が登場します。
姉のマルタさんはしっかり者で、現実的にてきぱきと仕事を
片付けるタイプの人として描かれています。妹のマリアさんは、
感情の豊かな女性のようです。
さて、あるとき、イエスさまは、この姉妹の家を訪れます。
マルタさんは、お茶をいれたり、食事の準備にとりかかったりと
大忙しです。対するマリアさんはといえば、イエスさまの足元に座って、
その話に聞き入っていました。
そこでマルタさんは言います。「少しは手伝うように、
イエスさまからも言ってください」。するとイエスさまは、
こう答えるのです。「マルタ、マルタ、あなたは多くのことに
思い悩み、心を乱している。しかし、必要なことはただひとつだけである。
マリアは良いほうを選んだ。それを取り上げてはならない」。
ちょっと読むと、「雑事に追われるよりも、神さまの言葉に耳を
傾けるほうがすばらしい行為だ」という教えのように思ってしまいます。
しかし、「必要なこと」という言葉の前に、「それぞれの人にとって」と
いう言葉を補って読んでみてください。「その人らしい良いこと」が
あるのだとイエスさまは諭していらっしゃるのです。
かいがいしく働いて、おいしい食事でもてなしてくれる
マルタさんのことを、イエスさまは大好きだったと思います。
また、よろこんで話を聴き、受け入れてくれるマリアさんのことも、
もちろん大好きだったと思います。どちらがよいかではなくて、
人それぞれのよさがある、違った役割がある、ということに
みんなが気づいていれば、小さなことで思い悩むことはなくなるのです。
人と比べるのではなくて、その子の独自の存在をまるごと受け止めてあげることがいかに大切か、このエピソードからそのことをもう一度想い起こしましょう。
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