学校法人 聖愛幼稚園
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書き下ろし連載五十四
きみは愛されるために生まれた

新堀邦司
                
神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の生命を得るためである。
(ヨハネによる福音書三章一六節)

   今年の六月、私は熊本市で在日韓国人ヴァイオリニストの ジョン・チャヌ(丁 讃宇)さんのコンサートを聴く機会に 恵まれました。ジョンさんはクリスチャンです。優雅で情感に あふれた演奏は聴く人々に静かな、それでいて深い感動を与えるものでした。 神様の愛のメッセージが一人ひとりの魂の奥底に送り届けられるような すばらしいコンサートでした。曲目は「アヴェ・マリア」(カッチーニ) 「イムジン河」「アメイジング・グレース」と続き、 最後に「きみは愛されるため生まれた」が演奏されました。 「きみは―」の演奏は柔らかく、優雅で、温かさを感じさせ、 私は知らずのうちに涙を流しながら聴き入っていました。 まさに魂に響く名演奏でした。

   「きみは愛されるために生まれた」。題名もすてきです。 今、この歌が日本でも静かなブームになっています。 きっと、皆さんも聴いておられることと思います。 この歌の作詞・作曲はイ・ミンソプという韓国人です。イ・ミンソプは ソウル市内にあるオンヌリ教会で中学高校生の賛美チームの指導にあたっていた 伝道師でした。彼は神様を賛美する歌をこれまでに三〇曲以上作曲していますが、 この歌は一九九七年に作られました。訳詩は神明宏、朴鍾弼&B・B・Jです。 日本では松本優香と原田博行、また双子姉妹のデュオ「たまりの」が歌っています。 日本語訳の歌詞を紹介いたしましょう。

  きみは愛されるために生まれた
  きみの生涯は愛で満ちている
  きみは愛されるために生まれた
  きみの生涯は愛で満ちている
  永遠の神の愛は われらの出会いの中で実を結ぶ
  きみの存在が 私にはどれほどの大きな喜びでしょう
  きみは愛されるため生まれた 今もその愛を受けている
  きみは愛されるため生まれた 今もその愛を受けている

   韓国生まれのこのゴズペルが、なぜ、この国で静かなブームになっているのでしょうか。 それは愛されることを切望しながらも家庭で、幼稚園で、学校で、あるいは職場で、 そうした機会に恵まれない人々が増えているからなのでしょう。ほんものの愛に出会えず、 温かな愛を知らずにいる人々がたくさんいるからだと思います。とくに可哀相で ならないのは親から充分に愛してもらえない子どもたちの存在です。幼児虐待の事件が マスコミで話題になるたびに私はとても悲しい気持ちになります。自分の子どもを虐待する親。 理由はいろいろあるでしょうが、もしかすると親である人が、自分の子どもの時に充分に 愛してもらえなかった。それ故に、自分の子どもの愛し方がわからなくなっているとしたら、 事態は深刻です。 もともと子どもは親から望まれて生まれてきたはずです。子どもは親から、まわりの人たち から愛されるために生まれてくるのです。幼い時に親から充分に愛された子は、生涯豊かな こころを持ち続け、受けた愛を人々に分け与えることができるのです。 「きみは愛されるため生まれた」。この歌詞の「きみは」をご自分のお子さんの名前に 変えて歌ってみてください。きっと、この歌の意味が身近なものになるに違いありません。 できたら、お子さんと一緒に家族で歌ってみてはいかがでしょうか。お子さんの存在が 一層ありがたいものに思え、家族の絆が強まることと思います。 親から、あるいはまわりから愛され、必要とされている。このことが実感できれば お子さんのこころは豊かなものになり、自信が持て、他者を受け容れ、思いやりのある人へと 成長するはずです。

   今年のプロ野球日本シリーズは、北海道の日本ハムが優勝しました。 北の大地はにわかに光り輝き、活況を呈しています。日本ハムの監督 トレイ・ヒルマンはなかなかの紳士です。闘志を内に秘めた思慮深い采配ぶりが みごとに効を奏し、チームを日本一に導きました。ヒルマン監督は クリスチャンの家庭に育ち、十三歳の時に洗礼を受けました。試合のある日もない日も、 毎日、必ず聖書を読む。そうすることで、自分の魂を落ち着かせているとのこと。 「野球の上での土台は北海道日本ハムファイターズに、自分自身の土台は クリスチャンとして、イエス・キリストへの信仰に置いている」と語っています。 彼が第一に心がけているのは、選手たちを個人的に愛すること、選手一人ひとりが 『自分は必要とされているのだ』と思ってもらえるようにすることだそうです。 そのために選手一人ひとりとのコミュニケーションを大切にする。 イエス・キリストの愛を人生の土台として選手一人ひとりをかけがえのない大切な 存在として扱い、指導している監督の行き方には学ぶべきものが多々あります。 参考までにヒルマン監督の一番好きな聖書の言葉は
「それゆえ、信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残る。その中で最も大なるものは、愛である」
(コリントの信徒への手紙一 十三章十三節)

   早いもので、あと一ヶ月もすればクリスマスシーズンを迎えます。 クリスマス。それはどのような意味を持っているのでしょうか。 クリスマスは何よりも神様の限りない愛を示す出来事です。 神様は最後の独り子であるイエス・キリストをこの世に遣わし、わたしたち一人ひとりを 欠け替えのない存在として愛して下さっていることを示す恵の出来事です。
「きみは愛されるために生まれて」
「きみは(神様から)愛されるために生まれた」
イエス・キリストはわたしたちのためにそう歌ってくれています


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新堀 邦司(にいほり・くにじ)先生

1941年2月 埼玉県に生まれる。
1963年 中央大学法学部法律学科卒業
2002年 本園の「せいあいだより」に寄稿開始。
恵泉女学園事務局長。俳句結社「日矢」同人。
著書:『青年の使徒』,『宣教師に育まれた料理人』,『海のレクイエム』
『愛 わがプレリュード』,『野尻湖物語』,『神を讃う』ほか




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