学校法人 聖愛幼稚園
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書き下ろし連載五十二
幼児に注がれる神の愛

新堀邦司
                
あなたの天をあなたの指の業を
わたしは仰ぎます
日も星も、あなたが配置なさったもの
そのあなたが御心に留めてくださるとは
人間は何ものなのでしょう
人の子は何ものなのでしょう
あなたが顧みてくださるとは

(詩編8篇四〜五節)

   この夏、世界中の人々の目が遠い宇宙の彼方にある「冥王星」に向けられました。 「冥王星」は太陽系の一番遠くに位置する九つ目の惑星でした。 普段、あまり注目されることのないこの惑星が一躍、時の人ならぬ 「時の星」になったのは、プラハで開かれた国際天文学連合で「惑星降格」 となったからです。「冥王星」は月よりも小さい星で、軌道もほかの 惑星に比べて随分傾いているし、岩石ではなく氷でできている。 しかも「冥王星」の周辺には同じような氷の天体が数多くあることが、 最近の観測でわかってきたので、惑星とは何かが問題となり、 この度の国際天文学連合の総会でついに「惑星降格」となったのです。 平素は宇宙に関心のない私ですが、この決定を聞いて「冥王星」が 少し可哀相に思え、夜空の一角に同情の視線を向けたものです。 もちろん、太陽系の一番外側に位置する冥王星を肉眼で 見ることはできませんでしたが。

   それにしても、初秋の夜空いっぱいにきらめく大小の星の数の多さに、 改めて宇宙の神秘を感じさせられました。 私たち現代人は、特別のことがない限り、あまり宇宙には関心を 払わなくなっています。この度の「冥王星」の話題は、久々に私たちの関心を 宇宙に向けさせてくれました。

   古代人は、自然や宇宙を身近に感じて生きていたといわれています。 聖書の世界を生きた古代のイスラエルの人々も同じでした。 日本と違って水蒸気が少なく、空気の澄んでいる中東―特に砂漠地帯では 夜になると満天の星空がひろがります。数え切れないほどの星々が 夜空にきらめき、ひしめく様は壮観です。その星空の下で、古代のイスラエルの 人々は宇宙の創造主である神を身近に感じ、その思いを信仰の詩に託したのです。 旧約聖書の詩編には、天体を仰ぎつつ、神への賛美、感謝をうたう すばらしい詩がいくつも書かれています。中でも、今回取り上げた八篇四―五節は 代表的な詩です。作者は、大宇宙を創造し、月や星を配置された神の偉大さに 畏敬の念を寄せつつ、その神が人間という小さないのちを創造され、限りない 愛情を注いでくださっていることに大いなる感謝の祈りを捧げています。

「そのあなたが御心に留めてくださることは
   人間は何ものなのでしょう。
人の子は何ものなのでしょう。
   あなたが顧みてくださるとは。」

   これはまさに神への感謝の祈りにほかなりません。天体とこの小さな私。 これらはすべて神のご意志にいよって創られた存在である。 天体に比べれば無きに等しい、この芥子粒のような私にも神の目は向けられ、 生かされているのだ。ああ、どのように感謝したらよいのだろう。 作者の思いが伝わってくるようです。

   「人の子」とは人間のことです。「人の子」中で、一番小さな存在が 幼子です。神様は一人ひとりの幼子にも目を向け、愛情を注いで くださっています。なんとありがたいことでしょうか。 神様の大いなる愛の中で聖愛幼稚園のこどもたちは、星よりも美しく輝き、 明日へ向かって成長しているのです。

   二学期が始まります。幼子にも注がれる神様の愛を信じ、 感謝の思いを持って歩んで参りましょう。


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新堀 邦司(にいほり・くにじ)先生

1941年2月 埼玉県に生まれる。
1963年 中央大学法学部法律学科卒業
2002年 本園の「せいあいだより」に寄稿開始。
恵泉女学園事務局長。俳句結社「日矢」同人。
著書:『青年の使徒』,『宣教師に育まれた料理人』,『海のレクイエム』
『愛 わがプレリュード』,『野尻湖物語』,『神を讃う』ほか




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