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書き下ろし連載五十一
ファンタジーに込められたメッセージ

新堀邦司
                
人の子は必ず罪人の手に渡され、十字架につけられ、三日目に復活することになっている、と言われたではないか。
(ルカによる福音書二四章七節)

   『ナルニア国物語』をお読みになりましたか。全部で七巻から なる大ファンタジーです。最近、第二巻目の『ライオンと魔女』が 映画化されて話題を呼んでいます。私も興味が湧き、ふだんは 滅多に読まない童話を手にしてみました。『ライオンと魔女』を 読みはじめたところ、面白くなってファンタジーの世界に思わず 引き込まれてしまいました。物語の主人公は、ピーター、スーザン、 エドモンド、ルーシィの四人の子どもたちです。 彼らが「ナルニア国」でなんとも不思議でドラマチックな冒険をします。 「アスラン」という名前のライオンと白い魔女の戦い。これは正義と 悪の戦いです。子どもたちもこの戦いに巻き込まれてゆきます。 私も、いつしか「ナルニア国」に飛び込んでしまい、寝るのを忘れて、 ハラハラドキドキしながら物語を読み進んでしまいました。 実に楽しい物語でした。よい童話は子どもだけでなく、 大人も楽しませてくれる、ということを知りました。

   現在、子どもにとって必要なことはファンタジーの世界に親しみ、 豊かな想像力を養うことではないでしょうか。最近、世の中が 殺伐としてしまって、大人も子どもも夢を無くしているように思えます。 大人が余裕を無くしてしまったから、その影響を受けて、子どもも そうなってしまったのでしょうか。だとしたら、大人に責任があります。 子どもに夢や希望を与え、こころを豊かに育てるのは大人の役割です。

   子どものこころを豊かにし、想像力を養うにはファンタジー性に満ちた物語を たくさん読み聞かせてやるのがよいと言われています。それには絵本や童話が もっとも相応しい。絵本は子ども自身の世界であるとともに、大人にとっても 必要な魂の原風景でもあります。お父さんもお母さんも、子どもとともに絵本や 童話を読んでみて下さい。ファンタジーの世界に親しみ、こころを豊かにして下さい。 一緒に絵本や童話を読むことによって親と子の絆が一層強まるに違いありません。

   『ライオンと魔女』には、作者C・S・ルイスの願いが込められています。 ルイスは熱心なクリスチャンでした。従って彼の作品にはキリスト教の メッセージが強く込められています。『ライオンと魔女』には新約聖書の メッセージ―キリストによる救い―が書かれているのです。エドマンドの 犯した罪を背負って彼に代わって死に、そして復活したライオンの「アスラン」。 人間の罪を贖うために十字架にかかって死に、そして三日目に復活したキリストが 「アスラン」のモデルになっています。小さな頃から聖書に親しんでいる イギリスの子どもたちは、言わず語らずにそのことを感じとっていることでしょう。 ルイスの描くファンタジーは、子供向けの楽しく、メッセージ性に富んだ 聖書物語と言えましょう。

   それはさておき、まだお読みになっていない方は、ぜひ、『ナルニア国ものがたり』を 子どもと一緒に読んでみて下さい。楽しい、ひとときになるに違いありません。


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新堀 邦司(にいほり・くにじ)先生

1941年2月 埼玉県に生まれる。
1963年 中央大学法学部法律学科卒業
2002年 本園の「せいあいだより」に寄稿開始。
恵泉女学園事務局長。俳句結社「日矢」同人。
著書:『青年の使徒』,『宣教師に育まれた料理人』,『海のレクイエム』
『愛 わがプレリュード』,『野尻湖物語』,『神を讃う』ほか




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