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書き下ろし連載三七
母の日に寄せて

新堀邦司
                
あなたの父と母とを敬え。
(旧約聖書 出エジプト記二〇章十二節)

  五月の第二日曜日は、「母の日」です。 今年は五月八日がそれにあたります。世界中のキリスト教会で 「母の日」が祝われます。最近では、キリスト教会だけではなく、 一般の家庭でも「母の日」が祝われるようになりました。この日、 子どもたちは日頃お世話になっている母親に感謝の気持ちを こめてささやかな贈り物をします。ほほえましい習慣です。 こうした光景を見ると、母親と子どもの絆の強さを感じさせられ、 心があたたかくなります。

  聖書には「母」という言葉がたくさん出てきます。 旧約聖書には二八六箇所、新約聖書に八一箇所、合計三六七箇所出てきます。 最初に出てくるのが、旧約聖書の創世記三章二〇節〈アダムは女をエバ(命)と 名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。〉 中でも 最も有名なのが出エジプト記二〇章十二節です。昔の聖書では〈あなたの父と 母を敬え〉と書かれていました。 子どもの豊かな成長には両親の愛が欠かせません。幼い時には特に母親の愛情が 必要です。聖書もそのことを十分に認めています。

  ところで「母の日」はいつから始まったのでしょうか。 一七世紀のイギリスでは「復活祭」の四〇日前の日曜日をMothering Sundayと決め、 家から離れて仕事をしている人が家に帰って母親と過ごすことが許されていた。 この時は贈り物としてお菓子を用意したそうです。イギリス人らしい優しさに あふれた習慣でした。

  さて、「母の日」が始められたのはアメリカの ヴァージニア州です。一九〇五年五月九日、アンナ・ジャービスという人の 母親が亡くなりました。アンナは苦労して育ててくれた母親のことが忘れられず、 亡き母を追悼したいとの想いから一九〇八年五月一〇日、フィラデルフィアの教会の 礼拝堂で白いカーネーション(花言葉・亡き母を偲ぶ)を配りました。出席した 人々は母親に寄せるアンナの想いに心を打たれました。この感動はアメリカ全土に 広がり、議会を、そして大統領の心を動かしたのです。一九一四年、ウイルソン大統領は 五月の第二日曜日を「母の日」と制定しました。

  日本では一九一五(大正四)年にキリスト教会で祝われ、 徐々に広がっていきました。現在のように盛んになったのは 戦後(一九四五年)以降のことだったといわれています。

  赤いカーネーションに託された子どもたちの母親への感謝の思いと ささやかな贈り物。こうした美しい習慣はいつまでも続いてほしいものです。

   イエスと母マリアの信頼の絆は多くのことを教えてくれます。 信仰深い母マリアの愛情を受けて育ったイエスが「愛の人」として 行動なさったのは当然のことだったといえましょう。神様の愛は母親を通して 子どもに伝えられるのです。母親の祈りと思いが子どもを豊かに育てます。 神様への深い信仰―それは母親を通して自然と子どもに伝えられるものだと思います。

  時として子育てには苦労があることでしょうが、 その苦労は将来、必ず報われます。母親の思い、願い、祈りは 必ず伝わるものです。「母の日」のお子さんの「お母さんありがとう」の 言葉と贈り物を心からの笑顔で受け取ってください。母親の喜ぶ姿は 子どもを勇気づけ、ますます心を豊かにさせます。


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新堀 邦司(にいほり・くにじ)先生

1941年2月 埼玉県に生まれる。
1963年 中央大学法学部法律学科卒業
2002年 本園の「せいあいだより」に寄稿開始。
東京YMCA学院院長。俳句結社「日矢」同人。
著書:『青年の使途』,『宣教師に育まれた料理人』,『海のレクイエム』
『愛 わがプレリュード』,『野尻湖物語』,『神を讃う』ほか




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