学校法人 聖愛幼稚園
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聖書のお話
書き下ろし連載二九
四つの誕生

新堀邦司

                
イエスは答えて言われた。
「はっきり言っておく。人は、新たに生まれなければ、神の国を見ることはできない。」
(ヨハネによる福音書三章三節)

  文芸評論家の亀井勝一郎は、人間の誕生について大変興味深い ことを書いています。人間には四つの誕生がある、というのです。
  第一は、母の胎内からの誕生
  第二は、自我の誕生
  第三は、信仰者としての誕生
  第四は、永遠の命への誕生。

  第一の誕生。母の胎内からの誕生は人間すべてに言える ことです。人間だけでなく、哺乳類も子どもは母親の胎から生まれてきます。 第二の自我の誕生。子どもはある年齢まで親の保護のもとにおかれ、 依存して生きていますが、身体も大きくなり、少しずつ交友関係(社会関係)が 広まり、自分でものごとを考え、判断するようになると自意識が芽生えます。 自我の誕生です。幼児から子どもへと成長する過程で誰もが自我の誕生を経験し、 やがて自立し、大人になっていきます。 さて、第三、第四の誕生となると前の二つとは意味も質も違ってきます。 第三の誕生。聖なるもの、永遠なるもの、己を超える絶対者との出会い、 信仰者としての新たな誕生をみることです。自分を超えた聖なる方、 絶対者を仰ぎ、神様のみこころ(御旨)に従って生きていくことを 自らの意志で決断し、信仰者(宗教者)になる。これが第三の誕生です。 第四の誕生とは、どういうものでしょうか。人間は誰もが母の胎内から生まれ、 成長し、やがては老いて死んでいく存在です。 人間の生命は有限です。とても悲しいことですが。しかし、 イエス・キリストは、神様を信じることにより、私たちにはもう一つの いのちが与えられることを力強く約束されています。 このいのちは永遠のいのちです。死をもって終らない、 栄光に満ちたいのちです。神様を信じることにより、すべての人がこのいのちに 与ることができるのです。信仰を通して新しいいのちが与えられる。 このことを亀井は永遠の生命への誕生といっています。

  永遠の生命を与えられて希望のうちに生きていく。誰もが願い、 求めていますが永遠の生命はお金で買ったり、人間が造り出したりすることは できません。神様によってしか与えられないのです。 ある時イエスは永遠のいのちをめぐってユダヤ人のニコデモと興味深い やりとりをしています。ニコデモはユダヤ教の教師で、議員をしている名の ある人でした。この人に向かってイエスは「新しく生まれなければ神の国を 見ることはできない」といったのです。新しく生まれるとは、もう一度母の胎から 生まれかえるという意味ではなく、自己中心の生き方を根本的に改めて、 神様に従って生きる。神と隣人のために生きる。この世の富とか名声や権力を 捨てて神様のみこころを大切にして、正しく生きていくということです。 ニコデモは、イエスの真意を計りかね、頓珍漢な質問をしています。 「年をとった者がどうして母親の胎内に入って生まれることが できましょうか。」イエスはニコデモを次のように諭します。 「はっきり言っておく。だれでも水と霊によらなければ神の国に入ることは できない。」キリスト教には「洗礼」という大事な儀式があります。 「洗礼」は、神に従って信仰の道を歩むことを決意した人が教会で牧師から 授けられる入信の儀式です。「水と霊による」とは「洗礼」のことを 言い表しています。洗礼とは罪人である人間が水の中で一度死に、 新たな信仰のいのちに生まれ変わることなのです。残念ながら ニコデモはイエスの真理を理解できなかったようです。 心がかたくなで、神の言葉を受け容れることができなかったのです。

  わたしたちは、誰もが第一と第二の誕生を経験しています。そして、次なる 課題として第三の誕生を経験し、第四の誕生へと進む輝かしい信仰の道を 歩んでほしいものです。 聖書に読み親しみ、さらに教会の扉を叩き、キリスト教信仰を得て、 永遠のいのちに与ることができれば、これ以上の幸いはありません。 第一と第二の誕生は誰もが自然のうちに経験しますが、一人でも多くの 人がそれから先の第三、第四の誕生へと進んで欲しいと願っています。


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新堀 邦司(にいほり・くにじ)先生

1941年2月 埼玉県に生まれる。
1963年 中央大学法学部法律学科卒業
2002年 本園の「せいあいだより」に寄稿開始。
東京YMCA学院院長。俳句結社「日矢」同人。
著書:『青年の使途』,『宣教師に育まれた料理人』,『海のレクイエム』
『愛 わがプレリュード』,『野尻湖物語』,『神を讃う』ほか




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