学校法人 聖愛幼稚園
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聖書のお話
書き下ろし連載二七
岩の上に内を建てる

新堀邦司

                
そこで、わたしのこれらの言葉を聞いて行う者は皆、 岩の上に自分の家を建てた賢い人に似ている。 雨が降り、川があふれ、風が吹いてその家を襲っても、倒れなかった。 岩を土台としていたからである。わたしのこれらの言葉を聞くだけで 行わない者は皆、砂の上に家を建てた愚かな人に似ている。 雨が降り、川があふれ、風が吹いてその家に襲いかかると、 倒れて、その倒れ方がひどかった。
(マタイによる福音書七章二四〜二七節)

   イエスはたとえ話の名人でした。
神さまの真理を誰にもわかりやすく話されました。 どのたとえ話も、一度聴くと人々の心をとらえ、忘れがたい印象を与えました。 新約聖書の中には、マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによって書かれた 四つの福音書が収められていますが、とくにマタイ、マルコ、ルカの福音書には イエスが語ったたとえ話がたくさん紹介されています。

  これらの福音書は、紀元後一世紀の中頃から後半に 書かれていますが、福音書に収められているたとえ話を読むと、 不思議に時間のへだたりを感じません。まるで、イエスが目の前におられて、 今、この時代を生きているわたしたちに、直接語りかけてくるように 感じられます。イエスの言葉は時代を超えて生きているのです。

    「岩の上に家をたてる」よく知られたたとえ話です。 イエスは神様の真理をわかりやすく人々に語りました。 神様が一人ひとりをいかに深く愛し、大切にしておられるかを語り、 人々を勇気づけたのです。話を聴いた人々は胸に希望を抱くことができました。

  そうした人々を前にして、イエスは次のように言いました。

神様はいつもあなた方を守り、導き、愛してくださる。 そのことを感謝をもって受けとめなさい。そして神様の愛に応えて 家族を大切にし、隣人に優しく接しなさい。 つとめて愛を行う人になりなさい。
  さらに、イエスはたとえをもって次のように教えさとしました。
神様を信頼し、愛に生きる者の人生は盤石な岩の上に家を建てた 賢い人にたとえられる。そのような家は、大雨が降り、洪水が襲ったり、 大風に吹かれたとしても土台がしっかりとしているから何の心配もない。 いつも神様の守りのうちに生きることができる。 しかし、いくら神様の話を聞いても、聞くだけで愛の行いを なさない人は神様に喜ばれない。その人の人生は、いわば、砂の上に 家を建てた愚かな人のようなものだ。 見かけはしっかりしているようでも、いざ、雨が降ったり、 洪水がおしよせてきたり、風が激しく吹いたりすると、 すぐに土台が崩れ、家は倒れてしまう。 神様はそのような人の生き方をよしとはされない。

  ここまで聴けば、どのような人生を選んだらよいかは、 おのずと明らかです。たとえ話を聴いた人は、神様への信頼と愛を 確かな土台として人生設計をし、しっかりした家を建てることを 決意したに違いありません。

  私は、十年ほど前にイスラエルを訪問しました。 日本とは違ってイスラエルの自然環境は苛酷です。旅の途中で見た 景色は赤茶けて、岩のごつごつ露出した大地ばかりでした。 ところどころに平坦な砂地がありました。 家をたてるとしたならば、岩の上より砂地の方が 良いように思えました。ところが砂地は、「ワジ」という涸れ谷で、 大雨が降るとたちどころに川が出現し、大きな音を立ててすべてのものを 押し流してしまう危険な場所であるとガイドさんが教えてくれました。 日本人には想像できない自然現象がこの地方ではひんぱんに起こるようです。 ですからイエスからこのたとえ話を聞いた人々はすぐに事情が呑み込めたのです。 イエスのたとえはこのようにいつも的確でインパクトの強いものでした。 彼らは岩の上に家を建てる生き方をすべく決意を固めたはずです。 神様に従って生きることには時として困難が伴います。 岩の上に家を建てるのはたやすいことではありません。 といって安易な道を選んで砂の上に家をたてるようなことをしてはいけません。 人生を台無しにしてしまいます。 盤石な、神様という岩の上に家をたてて住まいましょう。


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新堀 邦司(にいほり・くにじ)先生

1941年2月 埼玉県に生まれる。
1963年 中央大学法学部法律学科卒業
2002年 本園の「せいあいだより」に寄稿開始。
東京YMCA学院院長。俳句結社「日矢」同人。
著書:『青年の使途』,『宣教師に育まれた料理人』,『海のレクイエム』
『愛 わがプレリュード』,『野尻湖物語』,『神を讃う』ほか




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