学校法人 聖愛幼稚園
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聖書のお話
書き下ろし連載二六
神にお任せしなさい

新堀邦司

                
思い煩いは、何もかも神にお任せしなさい。 神が、あなたがたのことを心にかけてくださるからです。
(ペテロの手紙の手紙一 五章七節)

  幼稚園の新学期が始まって一ヶ月がたちました。 年長組、年中組の園児たちは、身体も心も成長してたのもしくなり、 すっかり園に馴染んでいます。先生との間に交わされる会話も 活き活きとしています。

  年少組の園児は、まだまだそうはいきません。 すべてが始まったばかりで、園児も先生も毎日たいへんです。 親から離れるのが嫌で、幼稚園の門の前で大泣きをする子。 一度、保育室に入っても先生の隙を見て逃げ帰ろうとする子。 先生の言うことに全く耳を貸そうとしない子。勝手におもちゃ箱を ひっくり返して辺り一面に散らかしてしまう子。 保育室の中はもうたいへんです。園児の世話をする先生は、 毎日、汗だくです。このように混沌としていた保育室も、一ヶ月もたてば 少しずつ落ち着きを見せるようになります。では、子どもたちが幼稚園に 馴染み始めたかというと、いちがいに、そうとはいえません。 依然として親から離れられない子、マイペースで行動する子、 友達とすぐにけんかをしてしまう子など様々な問題が渦巻いているようです。 しかし、これらを問題行動だと言ってしまうのは、よくないことです。 こうした行動は年少組の園児が幼稚園にだんだんと馴染んでいく 一つのプロセスなのですから、心配することはありません。 時がたてば年少組の子どもたちは、やがて、聖愛幼稚園の園児らしく なるのですから。子どもは弱いように見えて、その実、以外に適応力が あります。一学期も終りに近づくと、入園当初の騒がしい状態が 嘘のように思えるほどに落ち着いてきます。一人ひとりの子どもの成長の 度合いがはっきりと見てとれます。子どもはすごく大きな可能性を 持っているのです。

  このように細々と書いたのは保護者の皆さんに 少しでも安心していただきたいからです。 最近、なかなか子離れできない親が多くなっているとのことです。 そうした実例を、他の幼稚園の先生から度々耳にします。 子どもを園に送り届けても門の外に立ったまま、わが子がどんな行動を とるのかを、じっと見守る母親がいます。 Aちゃんはお母さんから離れたあと、すぐに砂場に行ってひとり遊びを 始めました。お友達のことは見向きもしません。 しばらく見ていましたが、ずっと砂場で遊んでいます。 降園の際にお母さんは心配のあまりに担任の先生に相談しました。

「他の子はお友達と遊べるのにA子はだめです。 どうしたらいいのでしょうか。とても心配です。」
 担任の先生は、こう答えました。
「お母さん、心配はいりません。Aちゃんは幼稚園の中に、楽しい自分の 世界を見つけたのですから。それがあのお砂場です。 もう少しするとお砂場でお友達と一緒に遊べるようになりますから。 こうして少しずつ世界が広がってゆくのですから」

  別のお母さんもわが子を見ていて心配していました。 B男くんは、一人っ子のせいか、自己中心的でお友達と仲良くできません。 すぐにけんかになってしまいます。「子育てに失敗したのだろうか」。 お母さんは、反省しきり。そんな悩みを担任の先生におそるおそる ぶつけてみました。

「子どもは誰も自己チューです。そこから出発します。 時間がたてばいつもそうはいかないことに気づき、協調、協力ということを 体験的に学び、変わっていきます。初めから誰とでも仲良くできる子なんて めったにいません。心配ご無用です。」
降園の時、年少組の先生はこうした相談や悩みを、お母さんからたくさんぶつけられるようです。担任の先生は、子離れできないお母さんや心配性のお母さんの思い煩いに耳を傾けつつ、一つひとつ丁寧に答えてあげます。

   思い煩いは人の世の常です。およそ、思い煩わないで生きている人など いません。神様は保護者一人ひとりの心配ごとをよくご存知です。 ご存知であるばかりでなく、親にも劣らない愛情をお子さんたちに注ぎ、 心身ともに豊かに、大きく育ててくださいます。なるほど、一人ひとり のお子さんの成長の仕方はちがっています。それが一人ひとりの 個性なのです。自分の子どもを他の子どもと比べていたずらに思い煩うことは やめましょう。神様はすべてをよくしてくださいます。 何もかも神様に任せましょう。幼稚園の先生方を信頼してこころ安らかに お子さまの成長を見守りましょう。

「安心しなさい」

神様はそう呼びかけてくださっています。


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新堀 邦司(にいほり・くにじ)先生

1941年2月 埼玉県に生まれる。
1963年 中央大学法学部法律学科卒業
2002年 本園の「せいあいだより」に寄稿開始。
東京YMCA学院院長。俳句結社「日矢」同人。
著書:『青年の使途』,『宣教師に育まれた料理人』,『海のレクイエム』
『愛 わがプレリュード』,『野尻湖物語』,『神を讃う』ほか




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